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なぜ今、高校時代に留学なのか?

① 求められる「主体性」

学校教育法第30条では、学力の3要素として以下の要素が挙げられています。
(1)基礎的な知識・技能
(2)思考力・判断力・表現力等の能力
(3)主体的に学習に取り組む態度

 これらは平成26年(2014年)12月に出された「高大接続改革答申」において、「社会で自立して活動していくために必要な力」という観点から、上記(3)主体的に学習に取り組む態度は「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」と置き直されました。

 いずれにせよ、「主体性」は学校教育において、涵養すべき資質・能力として依然重きを置かれているものといえるでしょう。

 一方で、経済界・社会は「主体性」に対してどのような評価をしているのでしょうか。平成30年(2018年)4月に日本経済団体連合会(経団連)から公表された「高等教育に関するアンケート結果」では、「主体性」は企業が学生に求める資質・能力として、文系・理系学生ともに第1位であり、「実行力」「課題設定・解決能力」などとともに、高く評価されているのがわかります。(図表1、図表2参照)

【図表1】 学生に求める資質、能力、知識(文系)
図表1 学生に求める資質、能力、知識(文系)
【図表2】 学生に求める資質、能力、知識(理系)
図表2 学生に求める資質、能力、知識(理系) (出典)一般社団法人日本経済団体連合会
「高等教育に関するアンケート」より上位項目抜粋

② 変わる大学入学者選抜

 2020年度の大学受験(2018年度の高校1年生が対象)は「大学入学共通テスト」を始めとして、新しい大学入学者選抜が本格的に始まる年度でもあります。平成29年(2017年)7月、「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」が通知され、ここでは各大学の入学者選抜において、前述の「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するものへと改善すると明記されています。

 また、一般入試では筆記試験に加え、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促すとされています。実際、すでに国立大学でも「学びの意欲を測る」として、調査書や推薦書に加え、高校での「学業活動報告書」や、大学で何を学び、卒業後何をするかの計画を描く「学びの設計書」などを評価の対象にするなど、新たな動きが広がっており、私立大学においても論理的思考力を問う論文を課したり、集団討論・プレゼンテーションでの評価を行うなど、新しい「学力の3要素」を測る取り組みが始まっています。2020年度を待たず、すでに変革はスタートしているのです。

 そして、調査書についても、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を含む「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するため、高等学校段階における多面的な評価への改善の取り組みを踏まえ、「一人一人が積み上げてきた大学入学前の学習や多様な活動等に関する評価の充実を図る」としています。
 これらをふまえ、以下のように調査書に関しての見直しも示されています。

<調査書の見直し>
 現行の調査書の「指導上参考となる諸事項」の欄を拡充し、以下の ①~⑥の項目ごとに記載する欄を分割して、より多様で具体的な内容が記載されるようにする。
①各教科・科目及び総合的な学習の時間の学習における特徴等
②行動の特徴、特技等
③部活動、ボランティア活動、留学・海外経験
④取得資格・検定等
⑤表彰・顕彰等の記録
⑥その他

 内容・項目の変更もありますが、大きな変更としては、これまで「裏表の両面1枚」となっていた調査書の様式制限が撤廃され、より弾力的に記載できるようになる、すなわち、調査書の枚数制限がなくなる(枚数は任意)ということではないでしょうか。(図表3)

図表3 調査書「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」より
図表3 調査書「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」より

 また、推薦書に関しても同様に「学力の3要素」に関する評価についての記載が必ず求められるようになり、志願者本人の記載する資料、活動報告書(図表4)でも具体的な記載が求められてきます。

図表4 活動報告書「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」より
図表4 活動報告書「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」より

これらは単に記載欄が増加するという変化ではなく、「●●部の部長をしていた」「▲▲のボランティアに参加した」という「何を」だけではない、「なぜ」「何のために」、そして「(何を)どのように」行ってきたかが求められる変化といえます。言い換えれば、これまで以上に「高校時代に生徒は『主体的に』何を行ってきたか」が、具体的に問われるようになってきていると言えるのではないでしょうか。

では、学校で「主体性」をどう育めばよいのか、大学入試ではどう評価するのか。平成30年(2018年)5月、そのような問題に向き合うためのフォーラムが、東北大学で開催されています。そこで参加・登壇した高校の教諭は、約10年間のキャリア教育の実践や、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)に取り組んできた経験を踏まえたうえで、それでも「主体性の涵養には時間がかかる」「主体的であることを求め続けられる生徒たちにも苦悩がある」といったことを述べています。

 社会も、大学も、入試も「主体性」「多様な人々との協働」を求めています。一方でそれらの涵養には時間がかかり、生徒の内発的動機が伴ってこなければ、主体性の押しつけ、協働の押しつけになってしまう懸念もあります。
 加えて、調査書や大学入学者選抜では「目に見える形での『行動』」をより具体的な形で示すことを求めてきます。
 こういった一連の変化を見てくると、高校時代における「目に見える形としての『海外留学』という行動」、日本国内の高校では難しい多様な人種・価値観と触れられる留学という場の有用性は、これまで以上に高まっているといえるのではないでしょうか。

 トビタテ!留学JAPANが海外留学経験者に行ったアンケートでは、「海外留学をして将来役立つと感じたこと」として、上位に「視野が広がった」「語学力が向上した」「自分の信念や価値観に変化があった」などが挙がっています。(図表5)
 生徒たちは短期間でこれらの変化を自覚しており、単に「経験した」という過去の体験に留まるものではなく、生徒のこれからの人生を大きく揺さぶるものであるといえます。

図表5 留学をして将来役立つと感じたこと
図表5 留学をして将来役立つと感じたこと
高校時代の留学の成果

 実際に短期間の海外留学を経験し、今は大学生になった学生の、留学前と留学後についてのインタビュー記事はこちら。

京都大学経済学部(三重県立川越高校出身)
森 詠美さん
京都大学特色入試に一期生として合格
インタビュー記事はこちら

筑波大学社会・国際学群国際総合学類
(広島県立三次高校出身)

原田賢志(たかゆき)さん
高校時代の2度の海外経験が学ぶ意欲を大きく育てる
インタビュー記事はこちら

 留学は必ずしも長期で行う必要はなく、短期間であっても新たな気づきや目的意識を育み、生徒の主体的に学ぶ姿勢を醸成するものであるといえそうです。

③ 高校時代の留学を望む声

 大学生の留学生数は下図のように年々増加傾向にあり、5年間で倍増、毎年約3%の学生が留学しています。

図表6 大学生の海外留学生数推移
図表6 大学生の海外留学生数推移

 高校生の留学はというと、最新の調査では全体の約1%程度にとどまっており、まだまだ少ないと言わざるを得ません。
一方で、トビタテ!留学JAPANで行った調査(図表7・9・10)では、高校時代に留学をした方がよいという企業の採用担当者は留学経験のある担当者で8割、留学未経験の担当者でも5割に達しています(図表7)。

図表7 高校時代に海外留学をした方がよいと思う(採用担当者)
図表7 高校時代に海外留学をした方がよいと思う(採用担当者)

 保護者の意向調査では、まだまだ企業ほどではありませんが、年々こどもに留学させたいと意向が高まっているのがわかります(図表8)

図表8 子供を留学させたいと思う保護者
図表8 子供を留学させたいと思う保護者 出典:一般社団法人全国高等学校PTA連合会/
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ

 そして、一度海外留学を経験した生徒の再留学意向は高校生・大学生ともに約9割と高く(図表9)、実際、高校卒業までに海外経験をしている場合、そうでない場合に比べ、3~5倍程度高い割合で高校卒業後も海外留学を行っていることがわかります(図表10)。

図表9 海外留学経験者の再留学意向
図表9 海外留学経験者の再留学意向
図表10 高校卒業後の海外留学経験
図表10 高校卒業後の海外留学経験
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必見!都道府県別 高校生留学率&取り組み事例

どの都道府県の高校留学生数が多い?率では?

 文部科学省が隔年で行う「高等学校等における国際交流等の状況調査」によると、平成27年度の都道府県別、海外留学生数、生徒100人当たりの海外留学率は以下のようなグラフとなります。(平成29年度調査は平成30年8月にかけて実施予定)

図表11① 都道府県別海外留学生数、生徒100人当たりの海外留学率(平成27年度)
図表11① 都道府県別海外留学生数、生徒100人当たりの海外留学率(平成27年度) 「高等学校等における国際交流等の状況について」(文部科学省)による
図表11②
図表11②

 同調査によると、平成27年度の全国の高校生の留学数は35,842名、留学実施率は1.05%でした。この数字は前述の大学生の留学生数・率に比べ、まだまだ少ないと言わざるをえません。

 しかし、都道府県ごとにみてみると、平均の2倍近い2.07%の留学率をあげている福井県や、平成25年度調査から大きく数字を伸ばしている佐賀県といったように、都道府県ごとに取り組みの違いもあるようです。

 ここでは、高校生海外留学割合上位の都道府県を中心に、いくつかの事例をご紹介します。

【事例】各自治体・教育委員会の取り組み(随時更新!)

【福井県】県内の高校2年生100名を2週間海外へ派遣

 平成27年10月に定めた「教育に関する大綱」において、グローバルな社会で活躍するための「使える」外国語教育の推進を掲げる同県。同年度の調査では、生徒数2万3468人のうち、留学したのが485人と、海外留学した生徒の割合は全国1位を記録。また、全都道府県で唯一、2%を上まわる2.07%の留学率にもなっている。
 高い留学比率の要因のひとつとして、県教委は平成23年度(2011年度)から継続している、県内の高校2年生約100人を2週間派遣する制度(費用半額補助)をあげる。
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【事例 佐賀県】中高生の海外留学・研修年間200名目標を大幅に上回って達成

 平成27年に定めた「-佐賀県総合計画2015-人を大切に、世界に誇れる佐賀づくりプラン」において、中・高校生の海外留学・研修(2週間以上)参加者を平成30年度までに年間200名を目指すとした佐賀県。

 その目標を1年前倒した平成29年度に、実績360名と大きく上回った。その要因はいったい何なのだろう。
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【広島県】平成25年から29年にかけ、高校留学生数3.3倍に

 平成26年12月に策定された「広島版『学びの変革』アクション・プラン」を県全体で推進するため、同県は教育部内に「学びの変革推進課」を創設しました。
 課題発見・解決学習の推進とともに、高校生の海外留学、姉妹校交流促進を中心とした「異文化間協働活動」の推進に取り組んでいます。
 同県では,「姉妹校交流」と「短期留学促進」を柱として取り組むことで、結果として平成25年度の県立高校(2週間以上)留学生数137名から、平成29年度は454名と、3倍以上の成果をあげています。
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[大阪府(国際課)]2週間の短期留学を含む9ヶ月のプログラムを実施

 大阪府では公益財団法人大阪府国際交流財団と大阪府が共同で実行委員会を設置し、平成24年度から大阪の国際化戦略アクションプログラムとしてグローバル人材の育成に取り組んでいます。委員会設置にはそれぞれが単独で行うことでは得られないメリットがあるといい、「府としては財団が培ってきたノウハウや人脈、ルートを活用することができ、奨学金の運用にも柔軟性を持たせることができました」(国際課)という。
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今後も随時事例を追加していきます。
(事例掲載希望の自治体・教育委員会からのご連絡をお待ちしております)
ryugakujapan@mext.go.jp

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