【岐阜県】岐阜県、新たに商業科・生活産業科など専門科高校生の海外研修を拡充
長期留学者への負担支援も過去7年で2倍以上に

 岐阜県が商業科、生活産業科(家庭科・福祉課)などの専門高校に通う生徒のグローバル人材育成事業を加速させている。特に今年度から商業科、生活産業科の専門高校生8人をオーストラリア・ブリスベン市に10日間派遣する「専門高校生グローバル人材育成事業」を開始し、農業、工業の専門高校生にも広げている。農業科では、今年度41回目となる「農業高校生海外実習派遣団(10人)」を22日間の日程でアメリカ、ブラジル、オランダ、ドイツへと派遣した。また普通科の生徒を含めて海外への長期留学支援にも力を入れており、高校生の留学数拡大に向けて手厚い施策を充実させつつある。

《TAFEでの授業風景》
《TAFEでの授業風景》

 岐阜県教育委員会は、今年度から新たに「専門高校生グローバル人材育成事業」として専門高校に通う生徒の海外研修事業を拡充した。8月24日から9月2日までの9泊10日で、オーストラリアのクイーンズランド州ブリスベン市に県立岐阜商業高校の生徒4人、県立大垣桜高校の生徒4人を派遣した。

 生徒らはオーストラリア州立職業訓練専門学校(TAFE)などで、語学研修のほか英語による職業教育や実習に参加した。また、クイーンズランド州立コリンダ高校でも職業科目や日本語教室に参加し、現地の生徒との交流を深めた。

 このほか、工業科では県立可児工業高校の生徒4人を8月上旬に日系製造業の進出が盛んなタイへ4日間派遣した。さらに12月上旬にも6日間の日程で、県立飛騨高山高校農業科の生徒4人をマレーシアに派遣して同様の研修を実施する計画だ。

 専門高校生のほかでは、普通科の生徒向けには長期留学の推進にも予算を割り当てている。約1年間の海外留学を計画する県立高校生に費用の一部を負担するもので、一人当たり30万円を支給。(平成24年度から平成29年度までは、家庭の所得状況に応じて30万円または60万円を支給。)この長期留学支援費用は平成29年度に年間810万円と、平成24年度の400万円に比べて2倍に拡充している。令和元年度は900万円を計上しており、さらに長期留学を増やそうとしている。文部科学省がまとめた平成29年度の「平成29年度高等学校等における国際交流等の状況について」という調査によると、岐阜県の高校生留学率(生徒100人当たりの留学者数の割合)は、短期留学と長期留学を合わせると0.82%と全国38位だが、長期留学だけで見ると同9位となった。
※平成29年度「高校生の留学促進事業」留学生の帰国報告
 https://www.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/kennai-gakko/koto-gakko/17782/eigo.html

《トマト農場》
《トマト農場》

 岐阜県には約40年の伝統を持つ「農業高校生海外実習派遣事業」があるなど、産業系専門高校生の海外研修に力を入れてきた。今年度は7月21日から8月11日まで22日間の日程で、アメリカのサンフランシスコ州フレズノにあるぶどう農場での研修を皮切りに、ブラジルでのファーム(農場)ステイや日系移民、現地大学生と交流。さらに8月2日からは欧州に渡り、ドイツのリンゴ農家や酪農家、次いでオランダでは肉牛やチーズの畜産事業者や花卉(かき)の農家を巡って研修を重ねたという。

 岐阜県は公立高校での産業教育(農業、工業、商業、家庭、情報、福祉など)学科に通う生徒の割合が37%超と全国平均(18%)を大きく上回っている。同県内の公立高校66校のうち、農業科があるのが7校、工業科が8校、商業科が12校、生活産業科が11校と多い。

 地元や近隣の中京圏にある企業に就職する生徒が多い。中京圏の中堅・中小企業でもグローバル化に伴って海外との取引や海外人材の活用が求められている。岐阜県教育委員会は、岐阜県が企業などに供給する若手人材にもグローバル教育が必要と見て、海外での研修事業を強化している。

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