留学大図鑑

稲垣美帆

出身・在学高校:
東京都立立川高等学校
出身・在学校:
立教大学
出身・在学学部学科:
異文化コミュニケーション学部
在籍企業・組織:

最終更新日:2021年07月09日

コロナ禍のロンドンでの大学院留学生活

留学テーマ・分野:
大学院進学(修士号・博士号取得)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ロンドン大学東洋アフリカ研究学院
  • イギリス
  • ロンドン
留学期間:
13か月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • (独)日本学生支援機構(JASSO)「海外留学支援制度」 4,500,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

 カンボジアにおける栄養と食の知識について人類学的視点から調査するための視座や方法論、食という観点から人類学研究を行うための知識の増強を目的として、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(以下SOAS)の「食の人類学」の修士コースに参加しました。本コースは授業参加の比重が大きく、自分の研究計画の練り上げと調査の実施に充てられる日数は約5カ月ほどでした。そのため、当初は留学の前半に、文献を読み、議論し、自分なりの主張を組み立てて、アウトプットする(口頭発表や小論文)訓練を積み、後半は、前半での経験を生かしてカンボジアでの現地調査も行いつつ修士論文を仕上げる予定でした。
 しかし、コロナウイルス感染拡大によって移動の制限、必要最低限の買い物や運動以外の原則外出禁止が命じられたため、研究計画の変更を余儀なくされました。その結果、現地調査で検討しようとしていたカンボジア農村部の人びとの食の知識や栄養政策の現場ではなく、文献資料で検討できる栄養政策の流れや歴史を対象に研究を行うことにしました。

留学の動機

留学の動機は主に二つあります。まず、食という観点に特化した人類学の修士コースを持つ研究機関は世界でもSOASだけであったためです。それから、学部時代にマンチェスター大学に交換留学したことがあり、イギリスは馴染み深く愛着のある国であったためです。

成果

留学の一番大きな収穫は、英語で読解・思考・議論・執筆する能力が格段に向上したことです。これは留学前とは比べ物になりません。また、研究に関して言えば、栄養政策に関する歴史的事象を整理し、現在の国家事業を調査した今回の研究は、今後博士課程で行う現地調査の基礎となり、カンボジアの食を対象とした数少ない人類学的研究を発展させる大きな足掛かりになりました。

ついた力

転換力

SOASの人類学コースでは、常に、自分が学んでいることを素早く応用し、具体的な議論に転換させることが求められました。また、コロナ禍での研究計画等において、今回の留学は私生活でも、様々な困難をポジティブに転換させる能力が必要になりました。特にロックダウンや外出自粛を通して、環境を変えなくとも上手に気分転換し、集中力を維持する力を体得することができました。

今後の展望

今後は、SOASに戻って博士課程に進学し、修士課程では残念ながら成し遂げられなかったカンボジアでの現地調査を行いたいと考えています。この調査を元に、同国農村部の人びとが食についてどう考え行動し、さらに、これから新たに始まる公立学校での栄養教育が人々のこうした知識や実践いどう取り込まれていくのかを検討したいです。

留学スケジュール

2019年
9月~
2020年
9月

イギリス(ロンドン)

 留学の前半は授業に参加して、食の人類学の様々な議論や視座に触れ、人類学全般の理論や知識を強化しました。方法論の授業課題では、食べ物を無料で交換するスマートフォンアプリのユーザーを対象に聞き取りや参与観察を行いました。この頃には英語が使いこなせていたので、調査遂行に苦も無く、自分の成長を感じました。そして留学の後半には、約5カ月かけて独自の研究計画を練り上げ、調査を行って、修士論文を執筆しました。
 同じコースの参加者とは、一緒に食事をしたり、パブに飲みに行ったり、授業の合間も様々な食文化や料理について語り合いました。食の人類学というニッチな分野だけあって、皆熱心に学び、毎回の会話や授業は非常に刺激的でした。

費用詳細

学費:納入総額

2,700,000 円

住居費:月額

85,000 円

生活費:月額

40,000 円

項目:航空券、旅行、ビザ、研修

300,000 円

食べ物交換アプリの調査で手に入れた総菜
費用詳細

学費:納入総額

2,700,000 円

住居費:月額

85,000 円

生活費:月額

40,000 円

項目:航空券、旅行、ビザ、研修

300,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

コロナウイルス感染拡大によるイギリス全土のロックダウンが開始されて暫く経ってから、それまで住み続けてきたロンドンのシェアフラットの契約会社が経営難のためか忽然と姿を消しました。これにより、ロックダウンの真っ最中に引っ越しを余儀なくされました。その時、幸運にも偶然家を数か月空けている間にhousesitting(家に滞在するかわりに動植物の世話をする)する人を探していた同じ修士コースのメンバーの一人が声をかけてくれ、無事に研究を行える住居が見つかりました。さらに、留学終了まで1か月半を切った8月半ばにはこの家の家族が帰宅するということで、また新たな家が必要になりましたが、さらに偶然が重なり、スコットランドの友人宅でたまたま空いていたワンルームを借りることになりました。こうして、最終的にはロンドンからスコットランドまで引っ越して修士論文を何とか書き上げました。不測の事態に当初は戸惑いましたが、こうして温かい友人にも恵まれ、研究が行えたことに本当に感謝しています。

ロックダウン~外出自粛が続き、空っぽになった大学キャンパス

密で説得力のある申請書

  • 費用 : 奨学金

資金を用意できるかどうかは、留学にとって恐らく最も重要で難しい問題です。これを解決する手立ては人によりますが、多くの人が奨学金の獲得に奔走すると思います。奨学金の審査では、応募者の経済状況、意欲、志望理由、スキル、研究計画...等々が勘案されます。これらを作成する際に私が一番大事だと思っているのは、「密」で「説得力のある」書類を仕上げていくことです。例えば、何故その志望校なのか?という質問に対しては、1つより複数、かつ審査員に「なるほど、それじゃあここがいいに決まってる」と思ってもらえるぐらいの徹底的な理由を挙げつつ答えることが大切です。そのためには、実際の文章を書き始める前に、考えうる理由やその補足となる説明を、他人を説得するようなつもりで家族や友人に話してみるとよいです。なるべく締め切りに余裕を持ってこの作業を開始し、何度か繰り返し、できる限り抜け穴の少ない説明に仕上げていく。これが成功への近道だと思います。

留学前にやっておけばよかったこと

後悔していることはありませんが、やってよかったことはいくつかあります。
まず、大事な人に会っておき、しっかり休んでおくこと。留学は物凄いスピードでストレスフルに過ぎていきます。この期間を楽しく健康に乗り切るためにも、留学直前は焦らないことがポイントです。次に、自分が研究するディシプリンやテーマについて十分な基礎知識は持っておくことです。こうすることで、留学を有意義に活用することができます。

留学を勧める・勧めない理由

留学によって何を得るかは千差万別だと思います。ただ、目的があったほうが成果が得やすく、学びも大きいです。費用も時間もかかるので、留学に迷いがある方は、自分の目的をじっくりと問い直してみることから始めるといいと思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

コロナウイルスの世界的な感染拡大で、留学も今まで以上にハードルが高くなっていることと思います。私もこのような状況で再度の留学(博士課程)を目指す者の一人です。世界全体では未だ不安定な状況が続いているとはいえ、一部の国では感染が抑えられ、様々な規制が緩和されつつあります。留学希望先の状況、各国政府や大学の対応等の情報収集を重ねながら、一緒に留学に向けて頑張りましょう。