留学大図鑑 留学大図鑑

だいざぶろう

出身・在学高校:
東大寺学園高等学校
出身・在学校:
東京大学
出身・在学学部学科:
教養学部総合社会科学科
在籍企業・組織:

大学生のときに交換留学でベトナムへ、修士課程の留学でイギリスへ、博士課程の留学でアメリカとカナダへ行きました。留学全てについて分かるわけではありませんが、自分の経験から分かったこと・思ったことについて話すことはできます。講演依頼としてメールを送って頂ければ回答するように努めます。若い方々の参考になれば幸いです。


最終更新日:2023年01月10日 初回執筆日:2023年01月10日

越、英、米を経て、カナダで人類学博士号を

留学テーマ・分野:
大学院進学(修士号・博士号取得)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • トロント大学人類学科
  • カナダ
  • トロント
留学期間:
4年以上
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • (独)日本学生支援機構(JASSO)「海外留学支援制度」 10,000,000円
  • 大学独自のもの 2,000,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル<TOEFL 108~112点(複数回受験)> 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

■博士号取得のため、正規の学生としてトロント大学人類学科に入学しました。自分のやりたい研究があり、日本か海外かを問わず研究ができる場所を探した結果、トロント大学になりました。
■入学先を選ぶにあたって重要なポイントは2つありました。ひとつは指導教官です。テーマや研究内容の面から指導を受けたいと思う先生が(当時の私の知識の範囲内で)世界中に何人かいたの、入学先の選択肢として、まずその先生たちが所属している大学院に的を絞りました。つぎに、資金繰りの問題がありました。カナダの他に日本と英国も選択肢にありましたが、日本も英国も自費によって生活費・学費を工面しなくてはいけません。この反面、トロント大学では入学した博士課程の大学院生位全てに生活費と学費を支給してくれます。この点が決め手となり、トロント大学へ出願し、合格して入学しました。入学後は、1年目はコースワークで希望の勉強をし、その後自分自身の研究計画作成を経て、現在の実際の研究という段階に至ります。当初の目的である「自分のしたい研究をする」という意味では、うまく行っています。学科内で何人もの先生と交流しながら、アドバイスや刺激を受けて研究を行っています。生活自体は淡白なもので、勉強と研究ばかりしています。博士課程の研究では、ゼミや授業といったものは基本的にありません。自分で自分の研究を進め、必要に応じて指導教官や他の先生に相談したり、学生同士で意見交換をしたりします。生活面では、息抜きも大切なので心がけてはいますが、正直なところあまり余裕がなく、一般的な感覚からすると過労気味だと思います。
■現在のトロント大学への留学とは別で、過去の話となりますが、東京大学の学部生だったときにベトナムへ交換留学をしました(ハノイ人文社会科学大学)。これはフィリピン研究をしていた教授の影響で東南アジアに関心を持ったため、現地のどっぷり浸かってベトナムの生活を体験してみたいと思ったからです。留学中は、まさにそのような生活ができました。ホームステイをしていたためベトナム人の生活を生で体験できました。ベトナム語も習得しました。留学中の取得単位は互換もできました。この留学の際には幾つもの奨学金に申請しましたがひとつも頂けず、私費留学となりました。
■大学卒業後は、イギリスの修士課程で勉強しました(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)。東京大学在学中に出願をして合格し、卒業後のギャップタームを経て渡航しました。ここでは人類学の勉強をみっちりとして、本当に忙しかったです。全く遊ぶ余裕がありませんでした。この修士課程はコースワークが中心で、自分の研究というよりは、学部レベルの後半で学ぶような内容を1年で集中して学ぶ、という感じでした。ただし修士論文は書くことになっており、この執筆のために私はベトナムで1ヶ月のフィールドワークを行いました。ロンドン大学在学中は、平和中島財団の奨学金とロンドン大学自体の学費減学措置を頂きました。
■ロンドン大学在学中に就職活動をし、修了後に日本で就職しました。が、2年で退職し、アメリカで人類学の博士課程に入学しました(プリンストン大学)。ここでは博士号取得まで5年以上の長期戦となるはずで、5年間の生活費と授業料の支給が予定されていましたが、個人的な事情により一度断念せざるを得ず、半年で自主退学しました。日本に帰国後、生活のための就労を経て、トロント大学で再チャレンジすべく出願し、現在に至ります。
■これらの長期留学の経験に加えて、10日間から3ヶ月間程度の短期間の海外渡航経験(フィールドワーク、スタディツアー、語学留学など)も多くあります。場所は、既に述べたものも含めると、フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイ、イスラエル、カナダ(バンクーバー)です(海外旅行は含めていません)。

留学の動機

ベトナムへの留学から含めて全体として考えると、最も大きなきっかけは、大学生のときに、フィリピンの開発経済学の教授が行っていたスタディツアーに参加したことです。ここから東南アジア、開発途上国、フィールドワーク、人類学と行ったテーマにのめり込んでいきました。そこから先は、プラクティカルな発想で、何を学びたいか、どこでならば学べるのか、必要な資金繰りは、などと考えていきました。

成果

上記すべての留学経験を通じて、単に「海外留学して視野が広がる」といった響きからは程遠いような、もっと深い意味で人間的に成長したと思います。特にベトナムという途上国の経験が大きいです。またカナダやアメリカのような国も日本とは色々と違いますので、そこで腰を据えて暮せば、人間的に成長せざるを得ないことが多くあります。辛いことも多かったですが、それらも含めて、素晴らしい経験をしてきたと思います。

ついた力

生きる力

日本では、物事が本当によく整備されています。海外ではそんなことは滅多にありません。ルールが有って無いようなものであったり、信じられないような差別が普通に存在していたり、誰も自分を守ってくれなかったりします。そのような環境で自分の追求したいものを追求し、自分なりに正しいと思える物事のあり方を実現するためには、常に工夫し、行動し、交渉しなくてはいけません。それを繰り返すことで、生きる力が身につきます。

今後の展望

とはいえ私の考えでは、「留学それ自体を目的として」留学するというよりも、「自分のやりたいことが留学の先にある」から留学するという態度で臨むほうが、最も意義のある留学ができると思います。私はそのような態度で、まずは学位を取り研究職としてキャリアを作っていくことを頑張りたいと思います。ただしその際には、留学で培った生きる力が大いに役立つはずだと思います。

留学スケジュール

2010年
8月~
2011年
6月

ベトナム(ハノイ)

東京大学からの交換留学でした。ベトナム国会大学ハノイ人文社会科学大学校の東洋学科および社会学科に所属し、ベトナム語の授業と社会学の授業を履修しました。週あたりの履修授業数は最小限に抑えて、ベトナム現地の生活を様々な形で体験することを重視しました。留学先の先生に手伝ってもらってホームステイ先を見つけ、間借りをして、毎夕食を家族とともに食べるという生活をしました。ハノイ遷都1000周年の記念イベントで観光ガイドボランティアの真似事をしたり、東アジア学生会議に参加したり、東洋学科のクラス旅行に参加させてもらったり、日本語を教えるバイトをしたり、日本に興味のあるベトナム人学生と交流したり、ホームステイ先の家族の家族行事に参加したり、中国人留学生と交流したり、露天のおばあさんと親しくなって入り浸ったり、研究所で都市社会学の研究資料を収集したり、東日本大震災の募金活動をしたり、ベトナムの各地へ旅行したりしました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

東洋学科のクラス旅行でお寺を訪れた
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

2012年
9月~
2013年
8月

イギリス(ロンドン)

ロンドン大学東洋アフリカ研究学院の修士課程で正規の学生として勉強しました。「開発の社会人類学」を専攻し、コースワークと修士論文に取り組みました。週末も返上で勉強ばかりしていました。住まいは大学の用意した寮(Student hallと呼ばれます)で、私の場合は4人の学生(専攻が異なる)でキッチンをシェアし、個室には勉強机、ベッド、シャワー・トイレだけがありました。4人のうちの一人がタイ人の留学生で、気が合ったため仲良くなりました。また彼が私たちのキッチンにてよくタイ料理パーティをしていたので、混ぜてもらい、他の棟や他の住まいからやってくる様々なタイ人留学生(他の大学を含む)と仲良くなりました。留学中は勉強で忙しかったため観光や旅行はほとんどしませんでしたが、課程が終了したあたりでわずかに時間ができ、イングランド最西部へ旅行したり、大英博物館を見学したりしました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

サッチャー元首相が亡くなり、国葬パレードを見学しました
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

留学中にやってしまった、私の失敗談

ベトナムのホームステイ先に住み始めた当初、まだベトナム語があまりできない時でした。ベビシッター兼お手伝いの女の子が住み込みで働いていたのですが、私はこの家の洗濯の仕方を(洗濯機はどこにあるのか、洗濯機はいつ回すのか、私の分は一緒でいいのか別にしたほうがいいのかなど)知りたいと思い、たまたま近くにいたベビーシッターの女の子に聞こうと思いました。私自身の洗濯物が入った袋を持って、拙いベトナム語で「これ、これ」と言いました。そうすると、洗濯機の場所に案内してくれることを期待したのです。すると女の子は、「そこに置いておいて」と言うのです。その女の子は食事の後の洗い物なども全てしているようだったので、この家ではこの女の子に任せるのがルールなのだと私は思って、言われるまま洗濯物を彼女に任せました。すると翌日これが大騒ぎになったのです。家族から「こいつは洗濯も自分でやらない怠惰な学生だ」と間違われて、「自分でやれ!」と怒られたのです。どうやら女の子は、私が「洗濯をやって欲しい」と頼んでいると誤解したらしいのです。言葉も通じないので誤解を解くことできないし、本当に惨めな思いをしました。このことから、現地のルールに素直に従うことはもちろん大切ですが、しかし同時に自分の考えていることをしっかり表現することも大切であり、そうしなければ思ってもみない誤解を生んでしまうということを学びました。

ステイ先の家族と夜の祭に出かけた時

大学院は合う合わないがある。行ってみないと分からない。合わないかも知れないという覚悟を。

  • 留学先探し : 大学院

私はアメリカの大学院の博士課程を初めた時、5年以上在籍する予定だったのですが、実際には色々な難しい事情があり半年で辞めることにしました(自主退学)。詳しいことはここには書けないのですが、ざっくりといえば、大学院の雰囲気や考え方と自分の個人的な特性が全く合っていませんでした。アメリカの色々な文化が自分に合っていなかったということもあります。その後仕切り直してカナダで大学院に入り直しました。同じ北米の、同じ人類学の博士課程でしたが、今度は、自分に合っている場所を見つけられた気がしました。その後、無事に今まで(現在時点で3年半)続いていますので、今回は大丈夫だったと言えそうです。アメリカの際の合わないという感じは、どれだけ下調べをしても、事前に知ることは難しかったと思います。カナダの場合も、自分に合うだろうという確信を下調べの段階で持つことは難しかったと思います。身も蓋もない言い方ですが、合う合わないは行ってみないと分かりません。下調べを徹底的にすることは言うまでもなく必須のことですが、それでも分からないことは無限にあります。行ってみてうまくかなければ、それで人生が終わりではないので、どこかの段階において、前向きな気持ちで諦める、ということも大切です。それでもまたやりたいと思ったら、やり直せば良いのです。

大学院は合う合わないがある。行ってみないと分からない。合わないかも知れないという覚悟を。

  • 留学先探し : 大学院

私はアメリカの大学院の博士課程を初めた時、5年以上在籍する予定だったのですが、実際には色々な難しい事情があり半年で辞めることにしました(自主退学)。詳しいことはここには書けないのですが、ざっくりといえば、大学院の雰囲気や考え方と自分の個人的な特性が全く合っていませんでした。アメリカの色々な文化が自分に合っていなかったということもあります。その後仕切り直してカナダで大学院に入り直しました。同じ北米の、同じ人類学の博士課程でしたが、今度は、自分に合っている場所を見つけられた気がしました。その後、無事に今まで(現在時点で3年半)続いていますので、今回は大丈夫だったと言えそうです。アメリカの際の合わないという感じは、どれだけ下調べをしても、事前に知ることは難しかったと思います。カナダの場合も、自分に合うだろうという確信を下調べの段階で持つことは難しかったと思います。身も蓋もない言い方ですが、合う合わないは行ってみないと分かりません。下調べを徹底的にすることは言うまでもなく必須のことですが、それでも分からないことは無限にあります。行ってみてうまくかなければ、それで人生が終わりではないので、どこかの段階において、前向きな気持ちで諦める、ということも大切です。それでもまたやりたいと思ったら、やり直せば良いのです。

留学前にやっておけばよかったこと

私は博士課程の留学に行けばしばらく日本に帰ってこないだろうと予想していたので、渡航前に日本国内のいろいろな場所へ旅行に行きました。しかし蓋を開ければ半年後に帰国し、またその後もコロナウィルス感染症の影響で予想外な形で帰国しました。物事は常に期待を裏切る、という感じがします。あまり気負わず、今やりたいと思うことをやればよいのではないでしょうか。

留学を勧める・勧めない理由

留学をすると、今まで自分が当たり前だと思っていたこと(というかより正確に言えば、当たり前だとすら思わず、その存在すら意識しなかったこと)が実は当たり前ではないということに気付かされます。そういう感覚が面白いと思う人は、ぜひ留学をするとよいのではないでしょうか。

これから留学へ行く人へのメッセージ

「留学」と言ってしまうと、日本と国外との間に壁があるように感じられます。しかし、その壁を感じないようになれるということそれ自体が、留学の意義なのではないかと思います。