留学大図鑑 留学大図鑑

西原 和代

出身・在学高校:
愛光学園高等学校
出身・在学校:
京都大学大学院
出身・在学学部学科:
文学研究科
在籍企業・組織:
奈良文化財研究所

日本の大学院博士後期課程の途中でアメリカへ2年間の研究留学をし、帰国後は希望通り研究者としてのキャリアパスを進んでいます。

博士後期課程の途中に、お金のない状態でなんとか留学したうえ、英語力もそこまでだったので辛いことも多々ありましたが、全く後悔はありません!信念と情熱をもってすすめば、様々な形でつながり、助けてくれる人がいます。留学をしたい人は諦めず道を探ってみてください。


最終更新日:2024年03月21日 初回執筆日:2024年03月21日

人と地域と自然を結ぶ考古学者になる!

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • カリフォルニア大学バークレー校 日本研究センター
  • アメリカ合衆国
  • バークレー
留学期間:
22か月
総費用:
- 円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 3,600,000円
  • 米日カウンシル渡邉利三寄付奨学金 575,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル<IELTS 6.5> 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<IELTS 7.0>

留学内容

当初計画では博物館業務に興味があり、研究留学とともに二つの柱としていました。博士後期課程での研究テーマである「縄文時代のかご作りと環境マネジメント」を、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭をとる日本考古学の先生と進めるとともに、Basketry Studyとしてかご作りの研究が盛んなカリフォルニアの先住民考古学との比較や実際の資料を見ることをとても楽しみにしていました。
しかし、折悪く2021年3月からカリフォルニアはロックダウン。大学博物館の閉鎖も含め、人類学部での全ての授業や研究活動がオンラインへの移行を余儀なくされました。
様々なことが重なってしばらく落ち込み、1年ほどカウンセリングにもかかりましたが(アメリカの大学院生は気軽にカウンセリングにかかります)、最終的にはオンラインでできることをしようと奮起しました。

折よく博物館でのオンライントークへの講演依頼をいただき、自分の研究について話す機会があったり、日本で暮らしている間時間がなくて後回しになっていた、どうして研究したいのか、何が明らかにしたいのかといったことをじっくり考える時間にもなりました。
2011年に日本で遺跡の発掘調査に参加してから10年、慣れ親しんだ枠組みと違う視点で自分の研究を見つめなおし、また演繹的な理論構築を重視するアメリカ人類学的考古学との比較の視点を持つことができました。

両方の視点を持つ、といえば聞こえはいいですが、どちらにもなじめない越境者として、研究生活を楽しんでいます。

留学の動機

留学の前、博士課程を1年半過ごして研究に行き詰まりを感じていました。新たな視点を得るため、周りの留学経験のある研究者の方々に話をきき、留学を決意しました。

成果

【研究】
文献を読み込んだことによる分野についての基礎知識や方法論の体得、そして興味関心の広がりと出会った人々との交流による研究の発展は何物にも代えがたい留学の成果です。
【語学力】
振り返ってみると留学前よりは確実に伸びました。会話に強い苦手意識があったのですが、第二言語を話している私のことを理解できない相手が悪い、という開き直りができるようになりました。

ついた力

相談力

留学するまで、多くの場合おおよそ人と同じような進路を歩んできました。留学先では、語学留学でも正規大学院留学でもなく、地域のマジョリティでもない「はぐれ者」。あらゆることが当然のようにわかりません。例えば、病院にかかったが請求が高すぎて払えそうもないとき、研究が思うように進まないがどこがひっかかっているのか分からないとき。適切な相談窓口や人にたどりつければ、どんなことでも道が開けてくると学びました。

今後の展望

現在、日本で研究者としてのキャリアパスを歩み始めたところ。2年半の研究所勤務を経て、3月から大学の非常勤講師として勤務するかたわら、博士論文の今年度中の提出を目指しています。
博士論文提出後は、アメリカでポスドクに応募する予定です。今度こそ、パンデミックのないアメリカを全力で楽しみたいです。

留学スケジュール

2019年
9月~
2021年
6月

アメリカ合衆国(バークレー)

アメリカ・バークレーでの私の留学生活2年間は、当時はまったく成果も先も見えないように思え、辛いものでした。しかし、振りかえってみて、あの留学生活で人に助けを求められるようになったこと、また留学先で出会ったたくさんの人との縁が、今の研究生活に新たな楽しみをもたらしてくれていることは間違いありません。(研究成果として今まで、そしてこれから発表されるものだけでなく、バークレーで会った人との出会いは、言葉通りの意味で私の人生を変えたとはっきりと言えます。

カリフォルニア大学バークレー校日本研究センターにて、2019年9月から22カ月の予定で入国、1学期を過ごしたところでコロナがカリフォルニアにも上陸し、ロックダウン(Shelter in place oder)となってしましました。先の見えない中、授業や研究指導はオンラインに速やかに移行し、数名のハウメイトとスーパーのレジ以外ではほとんど対面で人と言葉を交わすこともない日々が続きました。

2021年の渡米直後から参加していたアメリカ型の大学院セミナーは、多量の文献を読み、それについて討論をするという形式。日本でもそうした形式の自主ゼミなどには参加していたものの、慣れない生活と圧倒的な英語の購読量に圧倒され、研究室の友人との毎週金曜日の学科の院生飲み会に誘われても課題が終わらずひきこもる日々でした。研究者としての圧倒的な体力、地の力のなさを痛感し、一番つらかった時期です。

約2年間のあいだ、予定していた博物館展示準備の参加や資料調査などはコロナ禍のため全くできませんでしたが、バークレー校のフィービー・A・ハースト人類学博物館のオンライントークシリーズで一般向け講演の機会をいただいたり(注1)、研究のための資料調査に全く行けなかった分、文献の読み込みや公開されているオンラインリポジトリの資料探索に時間を割くことができました。普段とても忙しい留学先の先生にも、密なやりとりで指導をしていただけたことに感謝しています。また大学院の友人や同じ日本人研究者の人々を含め、多くの人々にとって大変なコロナ禍の間にも、思いやりを尽くして接しあえたことがとてもいい思い出となっています。
コロナ禍後半の2021年初め、研究室の友人のひとりが彼女のホームタウンであるユタ州へ招いてくれ、彼女とともにたくさんのユタ州南部の遺跡踏査や国立公園へ出かけました。そのうちの一つの踏査は日本帰国後に彼女との共著として学術雑誌で発表しました。(注2)
日本に帰国後には、カリフォルニアでの留学期間に研究としての興味がわいてきた文化的火入れについての紹介論文を書き(注3)、もともと続けていたかご作りの人々や研究者との交流を通じて、さらに研究を発展させていこうと話しているところです。

注1)西原和代 2020「Basketry and Plant Use in Prehistoric Japan」オンライン公開講演, 2020年企画展Cloth that Stretches: Weaving Community Across Time and Space. 関連講演. バークレー, 講師, 共催: フィービ―・ハースト人類学博物館・カリフォルニア大学バークレー校日本研究センター
注2)アンナ・ニルセン, 西原和代 2023「考古フォーカス アメリカ合衆国ケイヴタワーズ遺跡とミュール渓谷」考古学研究. 277: 115-117.
注3)西原和代 2023「文化的火入れが保つ景観―カリフォルニア先住民の長期的植物資源管理―」『文化財論叢Ⅴ』奈良文化財研究所創立70周年記念論文集, 奈良文化財研究所学報第102冊, 奈良文化財研究所, pp. 743-754.

費用詳細

学費:納入総額

163,500 円

住居費:月額

137,500 円

生活費:月額

93,750 円

項目:国際学会(2019カナダ、2021オンライン)参加費等

250,000 円

コロナ禍での留学、2年間のうち1年半ほどはほとんどオンライン
Shelter in Placeをともに過ごしたハウスメイト
ユタ州滞在中の遺跡踏査・国立公園トレッキングの途中で
費用詳細

学費:納入総額

163,500 円

住居費:月額

137,500 円

生活費:月額

93,750 円

項目:国際学会(2019カナダ、2021オンライン)参加費等

250,000 円

スペシャルエピソード

就活にも効いた!留学経験

留学中はとにかくいっぱいいっぱいで、ほとんど就職活動もしなかった私ですが(帰国したらまず実家に戻って博士論文を完成させようと思っていた)、ご縁があって一つだけ応募した研究所の任期付きポジションに帰国直後に就職することができました。
たまたま、現在働いている研究プロジェクトで英語ができる、専門分野の近い人への募集がでていたのです。大事な局面で幸運に助けられることの多い人生ですが、今回ばかりは生まれ持った幸運とともに、ときに泣きながら勉強した英語に感謝しました。

就職した研究所では英語圏だけでなく、中央アジアや東南アジアなどの様々な現場に派遣していただきました。英語がある程度できるようになったことで、現地で第二言語同士でのコミュニケーションにもある程度ぶつかっていけるようになりました。言語ができるに越したことはありませんが、留学で、最終的には人と人であることを体感したことが大きいのかもしれません。

カザフスタン・アルマトイの研究所に出張
カンボジア・西トップ遺跡での発掘調査風景

自分の得意を見つけて敷衍する

  • 語学力 : 英語

読むことは比較的できたものの、会話のリスニングとスピーキングがとても弱い状態で、最初は大学院セミナーのディスカッションや日常のハウスメイトが複数居る場での会話についていけませんでした。読むことは好きだったので、聞くことと話す機会を作ること意識的に確保するのと同時に、自分の得意な読書を英語学習の機会として活用しました。

・研究に必要な語彙を増やす
文献を読むのは当然ですが、大学院セミナーでは2時間みんながひたすら通常のスピードで議論するため、最初は全く聞き取れず辛かったです。2週目からはクラスメイトと教授にお願いして毎回授業を録音させてもらうことに。通学時間に聞きなおしてセミナーのノートに書き込みをしていました。

・Language Exchange
留学先の先生が自分の指導している院生で日本語が学びたいという人を紹介してくれ、2年間週一回数時間、お互いに英語と日本語を教えあうというLanguage Exchange をやりました。キャンパスでチラシを貼ってLanguage Exchangeの相手を募集している人も何度もみたことがあります。
留学中は毎日が英語の特訓状態と言っても、通常の会話で分からない単語を聞き返したり、文法を訂正してもらったりするのは難しいし、ストレスもたまります。そういった時間と場をはっきり分けて定期的に身をおくことで、自分も相手も着実な進歩が見えて楽しいものです。
 
・多読多聴
留学先の公共図書館でメンバーカードを作り(住所の証明ができればたいていはすぐ作れます)、オンラインでオーディオブックを借りて聞き、その後同じ本を借りて読んだり(あるいは同時に借りたり)して繰り返し同じ本を読みました。また、大人向けではなく幼児向けの絵本やYA向けの本を読むのも効果があります。

これから留学へ行く人へのメッセージ

人生は一度きり、留学に行きたいときが留学しどきだと思います。思いついたら留学してみて!高校生もたくさん留学に行く時代に、博士課程後期4年目から留学した私はだいぶ遅い留学生でしたが、ついてみれば様々な人が様々な理由で来ていることに勇気づけられました。人生における場所と人間関係が一気にかわる劇薬のような出来事が留学です。楽しい事ばかりではないですが、留学したことに後悔はありません。楽しんでください!