留学大図鑑 留学大図鑑

宮地茉莉

出身・在学高校:
広島大学付属福山高等学校
出身・在学校:
京都大学
出身・在学学部学科:
地球環境学舎人間環境設計論分野在学/工学研究科建築学専攻修了
在籍企業・組織:

学部・修士はバングラデシュ、博士はフィジー・バヌアツを対象地に防災・災害復興・伝統建築の調査をしています。


最終更新日:2021年03月11日 初回執筆日:2021年03月11日

サイクロンシェルターに関する調査研究

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • BRAC大学
  • バングラデシュ
  • ハティア島
留学期間:
2ヶ月
総費用:
450,000円 ・ 奨学金なし

語学力:

言語 留学前 留学後
英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル

留学内容

「バングラデシュにおけるサイクロンシェルター利用に関する調査研究」というテーマでBRAC大学に留学し2つの地域で調査研究(建物実測調査、アンケート調査)を行った。バングラデシュでは1971年の独立以降、政府や国際機関により建設された約4,000棟のサイクロンシェルターが多くの命を救ってきた。一方で、サイクロンシェルターは外部技術を導入した箱物支援であったため、地域コミュニティによる維持管理が困難であり約1,500棟は建物が朽ちてしまい使用不可能な状態となっていることが報告されていた。調査研究では、こうした課題を受けてNGOを中心に地域固有の建設技法を用いたサイクロンシェルターの建設が進められていること、さらに、被災後は地域住民により地域固有の植物を用いて高床式の簡易住居が仮設住宅として建設されていることが明らかになった。

留学の動機

中学のときに読んだフォトジャーナリストの本がきっかけで、途上国支援に興味を持ち、学部のときにバングラデシュにサイクロンシェルターの建設プロジェクトに参加した。大学院に進学後、BRAC大学でサイクロンシェルターの新しい試みを行っていることを知り1ヶ月インターンを行い、調査研究することを決意した。

成果

留学時はサイクロン被災直後であり、シェルターへ避難した人たちの生の声が聞けたことが何よりの収穫だった。また、エバンジェリスト活動を通じて、現地の新聞を活用した兜作りワークショップなど、お金を掛けずに現地の遊びの幅を広げることができたという点も一つの成果だったと思う。

ついた力

研究者としての交渉力

留学先の学生に2週間の調査協力を頼んでいたが、2日目に学生が実家に帰ってしまい、調査が続けられなくなってしまった際、指導教官への代理の調査協力者の交渉や、他大学の調査チームへの協力要請を行い、なんとか調査を続行した。調査研究だけでなく、プロジェクトマネジメントや研究者としての交渉力がいかに必要かということを学んだ。

今後の展望

留学最中にミャンマーでプロジェクトを行っているドイツの設計事務所に内定が決まりかけたが、大学を中退して就職しなければいけなかったため諦め、現在は所属していた研究室の博士課程に進学した。調査地は変わったが、テーマは変わらず、防災・災害復興、伝統建築、持続可能な地域づくりの研究を続け、大学・企業・国際協力機関を問わず、実践に活かして生きたいと考えている。

留学スケジュール

2015年
8月~
2015年
10月

バングラデシュ(ハティア島及びクルナ市)

バングラデシュにおけるサイクロンシェルターの利用実態について調査研究を行った。具体的には、ハティア島にて地元NGOの協力を得て、従来型のRCサイクロンシェルターの利用者に対するアンケート調査を行い、クルナ市ではBRAC大学が行っていたミニサイクロンシェルター(家型サイクロンシェルター)の居住後の実測調査とアンケート調査を行った。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

45,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:調査費(国内交通費・通訳補助費等)

170,000 円

新聞紙で兜作りワークショップ
現地住民に対するアンケート調査
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

45,000 円

生活費:月額

20,000 円

項目:調査費(国内交通費・通訳補助費等)

170,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

留学中にお世話になった人はたくさんいるが、その中でもBRAC大学にインターンしたときから特にお世話になったBRAC大学の学生との交流が、「留学」の幅を広げてくれた。インターン時には調査に同行してくれた後、BRAC大学の建築学科の先生の講演会に誘ってくれたり、有名建築家ルイス・カーンの設計した国会議事堂の見学の手配までしてくれた。今回の渡航ではBRAC大学を卒業していたにも関わらず、時間を取ってディナーに誘ってくれたり、SNSでアドバイスをくれたりした。また、その中の1人はヨーロッパに周遊留学に行くとのことで、バングラデシュで友人の留学を見送るという経験もした。バングラデシュでは、奨学金を得て海外留学をすることが浸透しており、英語のレベルも日本に比べて非常に高いように感じた。日常会話においても調査内容について議論する機会が多く、調査研究をより深く掘り下げることができたように思う。

BRAC大学の卒業生の留学を見送る

留学中のハプニング

調査研究の目的でバングラデシュに留学し、通訳サポートとして学生スタッフが2週間調査に付き添ってくれるという約束を交わしていた。しかし、調査前の打ち合わせで学生から「2週間の調査なんて聞いていない!」と言われ、調査地に着いて2日目に「婚約者が迎えに来るのでダッカに帰る」と本当に帰ってしまった。首都のダッカからバスで丸1日かかる、英語も通じない辺境の地に1人残され、あわや調査中止というところまで追いやられたが、たまたま同じ村で調査をする予定の日本人調査チームがいたため、事情を話し、通訳スタッフの提供を要請した。それまではBRAC大学に調査の段取りを任せきりにしていたが、ハプニング後初めて通訳スタッフを自ら探し、仕事のお給料の交渉まで行った。幸い、日本人調査チームのコネクションですぐに通訳スタッフが見つかり、調査も無事終えることができたが、途上国での現地調査の難しさを痛感する苦くも良い経験を得ることができた。

この国のことが、とても好きになった瞬間

ある休日に観光をしようと思い、テラコッタの陶器作りで有名なヒンドゥー教徒の住む村へバスを乗り継いで行ったときのこと。村に辿りつくには舟に乗らなければならなかったのだが、そこで数人の船乗りから通常の値段の10倍以上の値段をふっかけられた。何度交渉しても値段が下がらず、村に行くことを諦めかけていたが、1人の船乗りが「俺の舟に乗れ。値段は通常と一緒でいい」と助けてくれた。また、舟を降りるときも、英語の話せる村の案内役を紹介してくれた。案内役の男性は、2時間かけて村を案内してくれ、お茶までご馳走してくれた。ガイド料を払おうとすると、「またこの村に遊びに来てくれることが最高の恩返しだ」とお金は受け取らず、船乗り場で舟が出るまで一緒に待ってくれた。バングラデシュはホスピタリティの高い人が多く、バスを乗り間違えたり、道に迷っていると親切に教えてくれる人が多いなとは感じていたが、ここまでお世話になったことはあまりなく、本当にあたたかい国だなとより一層この国のことが好きになった。

テラコッタの陶器作りのようす
テラコッタを焼く釜の前で地元の職人と

学生スタッフの雇用費用

  • 費用 : 費用準備

研究でアンケート調査を行う目的で留学したため、留学先のBRAC大学から通訳として学生スタッフに同行してもらった。学生スタッフの雇用費用は日本の大学の研究室から研究費としてある程度賄ってもらったが、調査地は僻地であり、ホテルが限られている上に宿泊費が他と比較して高く、予算を超えてしまう可能性があった。学生スタッフは女性だったため、ツインベッドの部屋でルームシェアしてもらうことを交渉し、車もチャーターではなく、なるべく現地のベイビータクシーを利用する等節約を心がけた。その後、学生スタッフは諸事情で帰ってしまい、代理の学生スタッフを自力で探し、お給料・宿泊・食費の交渉を行ったが、その際もなるべくルームシェアをしてもらい、その代わり食事は少し豪勢にする等、調整を行った。

これから留学へ行く人へのメッセージ

トビタテの留学ではアンバサダー活動(自分の好きな日本を海外で伝える活動)を勧められますが、この活動のおかげで調査研究という目的だけでなく、日本の文化を見つめなおすこと・留学先の人との交流を深めることができました。留学先では、受身でなく常に自主的・積極的な姿勢を心がけることで、得るものが2倍にも3倍にも増えると思います!