留学大図鑑 留学大図鑑

ヒライユージ

出身・在学高校:
長野県上田高等学校
出身・在学校:
山形大学
出身・在学学部学科:
長野県出身・理工学研究科物質化学工学専攻(5年一貫制博士)
在籍企業・組織:

MRSやECSなどの国際学会の参加経験や海外での研究留学の経験等(計12か国程度)から皆さんのご相談に乗れることがあるかもしれません。また将来修士や博士課程進学を考える方の漠然とした不安にも少しお話しできることがあるかと思います。
ぜひ何かの形で未来の明るい皆さんのお力になれたらと考えておりますので、返信が遅いこともあるかもしれませんが些細なことでもどうぞ遠慮なくご連絡ください!


最終更新日:2020年11月05日 初回執筆日:2020年11月05日

アジアからエネルギー変換貯蔵技術の革新!

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • 北京大学深圳研究生院
  • 中国
  • 中国・深圳
留学期間:
6カ月
総費用:
1,200,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 870,000円
  • 大学独自のもの 200,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
中国語 挨拶など基本的な会話ができるレベル 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル

留学内容

留学全体を通じて、エネルギー関連事業に関わる人との国際ネットワークの形成をテーマに留学を行いました。具体的には、エネルギー変換貯蔵技術に関する研究、特に銅主体の化合物を用いた二酸化炭素還元触媒の開発に従事しました。さらに土日や長期休みを利用して日本国内で行われる学生主体の国際学会(アメリカ電気化学会後援)に教員・学生を招待すること、また人的ネットワークの拡大を目的とし、中国国内で宣伝活動なども行いました。一方、サブテーマとして、日本で関わっていた化粧品企画の事業の一環で中国国内のマーケットリサーチを行いました。

留学の動機

5年一貫制博士課程リーディングプログラムの所属学生は留学が義務付けられていたことも理由の一つではありますが、将来、アジア地域を次世代の資源・エネルギー拠点に引き上げ、工学の専門的な立場から、人々に手を差し伸べられる国際人材になりたいという気持ちが大きく留学を決意しました。副次的な目標として第三言語の習得を掲げていたことも動機の一つです。

成果

学術分野に関しては二酸化炭素還元触媒の候補材料の合成と選定を行うことができ、論文化を進めることができました。また留学期間内に8都市15大学の人と接する機会を設けることができ、また日本における講演に中国の研究機関から招待する契機を創出しました。一方、化粧品に関しては市場の動向を追うことができ、随時化粧品企画の原案に反映し、OEMの会社に見積もりを出す段階まで落とし込むこむところまで準備が進みました。

ついた力

複眼的思考力

深圳市に滞在中に香港での暴動、米中貿易摩擦、またコロナウイルスと直接的に生活を揺るがす出来事に直面し、伴なって誤った認識の流布やヘイトを目にする機会が増え、正しい知識とリテラシーを持とうという意識が強くなりました。そういった経験から、文化、産業、政治など多くのパラメータが複雑に絡み合った国際社会において各事情を鑑みながらパラレルに物事を考える複眼的思考力を身につけることができたと考えております。

今後の展望

留学期間、触媒等ののエネルギー変換貯蔵技術に関連する材料の研究開発やそれらに基づく研究発表を通じ、社会の資源やエネルギー課題と向き合う機会が多くありました。そのため、将来は日系の化学系企業にて、解決できるかもしれない課題を抱えながら技術的な障壁が高いがゆえに解決に至るまでの糸口に辿り着くことが難しい、国内外の個人や法人、組織を支援できるようなインフラや材料の研究開発に携わりたいと考えております。

留学スケジュール

2019年
8月~
2020年
2月

中国(深圳市)

5年一貫制博士課程リーディングプログラムの一環として、北京大学深圳研究生院に留学していました。滞在中は二酸化炭素還元触媒の開発をテーマに研究を行うと共に、日本で行われる学生主体の国際学会の宣伝活動(8都市15大学)なども併せて実施しました。日本では化粧品企画の事業に携わっていたこともあり、副次的な目標として中国でのマーケットリサーチを行いました。
平日の生活サイクルとしては、日中は実験を行い、夕方になると研究室の仲間たちと水泳やサッカーをし、夜は再び実験を行ったり論文を読み込む日々を送っていました。その一方で週末や長期休みになると運動を嗜む傍ら、日本からのお客さん対応や中国国内の都市や他大学を巡るなどしていました。中国では研究室の先生や仲間はもちろんのこと、数年のスパンで交流が続いている友人たちや他のトビタテ生には大いに助けていただいたおかげでより充実した留学になったように思います。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

45,000 円

生活費:月額

55,000 円

項目:中国国内移動費・滞在費

600,000 円

アートが並び、ニューカルチャーが芽吹く深圳。スケーターも多い
北京大学内のサッカー大会で優勝した時の様子
天津での研究発表の様子
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

45,000 円

生活費:月額

55,000 円

項目:中国国内移動費・滞在費

600,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

中国留学中には中国の同世代の友人や先輩・後輩にほんとに助けられました。大学の寮が取れない状況を察して居住地の提案や契約の準備をしてくれた先輩、生活用品の準備やSIMの契約、銀行口座の開設までも面倒を見てくれた後輩、週末のイベントごとに毎回誘ってくれ日本への留学も決意した友人、3年ぶりの再会を盛大にもてなしてくれた上海の友人、所属していたサッカーチームのメンバー、数日に渡って研究室や観光案内をしてくださったポスドクの先輩…。挙げたらきりがないほど多くの人に助けていただきました。政治的なかじ取りの難しさというものはどこの国においても介在する共通の課題だとは思いますが、少なくとも草の根交流から発展する友好関係は築いていきたいと強く思っております。

上海に住む数年来の友人との1枚
学部の頃から親交があった友人姉妹との北京での1枚
大学で所属していたサッカーチームでの集合写真

この国のことが、とても好きになった瞬間

留学当時、中国を巡り緊迫した空気感があったため、発言に関してはかなり気を遣いました。ただそんな状況においても、両国のかなりセンシティブな内容に関して仲良くなった法学部や理学部、医学部様々なジャンルの学生たちと深い議論することが多くありました。日によっては1日に5時間にわたる議論をすることもありました。ただ、議論を交わしている最中に自身の持ち合わせる情報と整合性が取れないことがあれば、彼、彼女らは公平に検証し次の意見を投げかける習慣がついており、中国における北京大や清華大のいわばエリート層にも柔軟な考え方をできる人材が多くいることを知り、好感が湧きました。もちろん、マジョリティがどのような考え方をするのかは統計を取ったわけではないので皆目見当もつきませんが、少なくともこういう人材がいるのであれば、将来的な2国間、また東アジアでの未来も悪いことばかりではないのではないかと思うことができたことで好きな部分も増えたように思います。

笑いあり、涙あり!留学中にあった、すごいエピソード

留学の終盤に研究室の先輩に誘われて汕尾市で開催された40キロのトレッキングのイベントに参加した時のことです。泊りがけで行き、土曜日に前泊し日曜日に歩く日取りだったのですが、なんだか前日から熱があり、翌朝にも下がっておらず、帰るわけにもいかずそのまま歩くことに。ただ40キロなら何とかなるかと思っていたのが間違いで実際の工程は60キロ以上あり、後半の方は半分意識が飛びそうな状態。それでも何とか歩き終え、夜の飲み会を断り、ショッピングモールで出来合いの物を買って帰ることに。ところがそのモールの出口を誤って、しばらく30分以上建物の狭間に閉じこまれることに。その後なんとか隣の建物の住人が入ってきて偶然開いたタイミングで脱出に成功。ようやく家路につけると思って乗り込んだタクシーが順調に走り出したのも束の間、追い越してきたバイクと衝突し事故に…。互いに軽傷で済んだのが不幸中の幸い…。無茶がもたらすのは不幸ばかりですので、皆さまどうぞ無理のない行動計画を(笑)

途中では登山ゾーンなども。後半戦の砂浜での様子

研究留学で第三言語を学ぶための泥臭い時間の作り方

  • 語学力 : その他の言語

自身の留学のタイプが語学留学ではないため、第三言語を身に着ける機会を得ることに苦心しました。普段は当然研究に注力しなければならないので、言語学習の時間は物理的な限界がありました。加えて日々、研究の話をするとなるとどうしても英語でのコミュニケーションに頼ってしまい、中国語を発話する機会を作ることに非常に難しかったです。それでも、週末のサッカーチームで出会った日本に興味がある学生の中からランゲージパートナーを見つけたり、研究室のメンバーや馴染みの店の店主に会話の機会を作ってもらうことで何とか最低限の語学学習の時間を確保することができました。
泥臭くやって学んだ言語は忘れることがないかもしれません。私自身もタクシーでぼったくりに遭いかけた時に使ったフレーズなどは今でもはっきりと覚えております(笑)

ランゲージパートナーとのツーショット
研究室メンバーとの食事会での1枚

海外の金融機関への日本からの送金手段の複数確保

  • 事前準備 : 渡航手配(VISA、保険、持ち物など)

中国は現金の国際送金がとりわけ難しい国の一つです。中国で留学程度の場合だと口座を開設することも一苦労です。口座を開設してからも特定の銀行からの送金でないと手数料が多くかかったり、ネットバンキングの開設にも思ったより時間がとられることがあります。さらに現在の中国では日本よりも高次元でキャッシュレス化が浸透しており、現金を使えない場面にも直面する機会が非常に多く、また高級デパートなどでない限り、VISAやmasterが使えないことも多々あります。現地で決済の手段がないような状況を避けるためにもは以下の対策をお勧めします。
・日本でネットバンキングの開設
・Trasnferwiseやイオン銀行など国際送金に少ない手数料の手段の準備
・現地で口座を開設しやすい銀行の把握
・Union payカードの発行
・日本で少し換金し、現金を持っていく
これは補足になりますが、VPNサービスの契約と現地でのSIMの契約(China mobile or China Telecom )をすることで、普段の生活が大幅に改善します。
→ex)中国内で日本でも使っていたSIMが入った状態のスマホからVPNを介して、インターネットバンキングを用いた国際送金を行い、中国の銀行で現金受け取りのプロセスを経た後、スマホに現地契約のSIMを挿入し、現地でキャッシュレス決済をするなど。

留学前にやっておけばよかったこと

研究面に関して米中貿易摩擦が原因となって必要な機器の供給が停止し、現地で行う予定であった実験が行えないことがありました。地政学的なリスクの全てを想定することは困難ですが、プランB、Cの準備はしておくべきであったと後悔が滲みます。一方研究以外の面に関しては、やはり最低限の言語学習であるように思います。特に研究留学で第三言語を身につけることはハードルが非常に高いので事前の学習をお勧めします。

留学を勧める・勧めない理由

可能であれば勧めます。しかし語学を学ぶことがメインであれば行く必要はないように思います。なぜならインターネットコンテンツが充実した今、コミュニケーションをとる程度の英語は現地に行かずとも身につけられると考えるからです。ツールを身につけることが目的化せず、何か強い動機や目標があり、それを達成するプロセスの中の必要条件として海外で学ぶ必要があれば無理を押してでも行くべきであるように思います。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学経験者の中にはなかなかなしえないことをこなす優秀な人材もいます。しかし、留学に関しては比較論ではないように思います。センセーショナルな話は注目を集めますが、それも一過性のモノ。周囲の人の話に気をとられ過ぎる事なく、どうぞご自身の決断できたことをまず一番に肯定してあげてください。いつか振り返った時に、自分で決断できたことは必ず自信に繋がるように思います。