留学大図鑑

上嶋悟史

出身・在学高校:
岐阜県立斐太高校
出身・在学校:
神戸大学大学院
出身・在学学部学科:
人文学研究科
在籍企業・組織:
日本学術振興会DC2

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台湾で深める。東アジア美術史研究

留学テーマ・分野:
大学院生:交換・研究留学(日本の大学院に在籍しながら現地大学院内で学ぶ留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • 国立台湾大学芸術史研究所
  • 台湾
  • 台北
留学期間:
11ヶ月
総費用:
1,300,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表プログラム」 990,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
中国語 挨拶など基本的な会話ができるレベル 専門的な研究や会議において、議論や調整ができるレベル

留学内容

交換留学生として約1年間、国立台湾大学芸術史研究所に所属しました。
私は日本の絵画、とくに江戸時代に描かれた仏教絵画について研究しています。美術史学とは「作品がいつ、どこで、なぜ、誰によってつくられ、つくられたあとどのように鑑賞されてきたのか」を探ることを通し、作品の果たしてきた社会的機能を解釈することであると、私は考えています。また、それを通して時空を違える他の人間の思考/思想について理解し、広く紹介することです。
日本美術の歴史を考えるとき、中国文化の存在は無視できません。日本の画家や絵画の鑑賞者にとって、中国美術は常に意識されるものであり、取捨選択しながらみずからの内に取り込んできました。じつは「江戸時代」も「仏教絵画」も、日本美術史学の花形です。しかし、その両方の要素をもった私のような研究領域は、まだまだ未開拓です。私はこの領域を開拓するにあたり、中国美術史についての知識が必要と考えました。鎖国下にあった時代でも、すでに日本に伝来していた元朝以前の作品や、長崎を通して新たにもたらされた明清朝の作品は選択的に受容されていたという事実があります。国内のみに目を向けた狭量な視野では充実した学問になり得ません。
このような意識のもと、台湾大学芸術史研究所を拠点に、故宮博物院や台湾師範大学芸術史研究所などで、中国美術や、その日本とのかかわりについて研究しました。

留学の動機

台湾大学芸術史研究所は、規模、質ともに、中国美術を学ぶ上で世界有数の大学院です。故宮博物院とも提携した講座を持つなど、実物に即した研究の遂行が望めました。
神戸大学の研究室では毎秋、故宮博物院における作品調査を軸とした研修旅行を組んでいます。私は留学前にはすでに複数回、台湾への渡航経験があり、指導教官となる先生とも面識がありました。以上が、留学の動機でした。

成果

留学を通して、中国美術の知識、とくに明清朝の絵画について知見を深められたほか、台湾と日本における研究のあり方の違いを実感しました。つまり日本では絵画作品や文字資料がよく残存しており、アクセスもしやすいという利点がある一方、台湾では限られた機会を活かすため、より注意深く作品を鑑賞する習慣があると感じました。自分の研究方法を相対化できたことで、客観的で妥当性のある研究を進めるための素地を獲得しました。

ついた力

今を生きる力

現代人にとって、自己実現は重要なこととされています。なりたい自分の虚像をつくり、それを逆算して行動します。しかし私は台湾での生活における内省を通し、そのような自己実現欲求を、未来に希望を描くことを、不必要だと知りました。ただ今日を一生懸命生きる。目の前の課題だけに、真面目に取り組む。今は日々充実感に満たされながら、研究に邁進できています。

今後の展望

上述したように、未来への展望はありません。留学で得られたことを忘れず、虚心坦懐に、研究と向き合っていくのみです。

留学スケジュール

2018年
9月?
2019年
7月

台湾(台北)

台湾大学では博士班の学生として芸術史研究所に所属し「仏教芸術学」や「日本に渡った宋元絵画」についてのゼミに参加し、単位を取得しました。ゼミでは先生の指導を受けながら、中国語で研究発表や討論をしました。このほか「唐代の画史画論」や「インド仏教彫刻」などのゼミに聴講生として参加し、発言の機会も持ちました。また台湾大学では芸術史研究所における学習活動のほか、留学生を対象とした中国語の授業を受講し、語学力の向上に努めました。
同時に、台湾師範大学芸術史研究所において「明代の視覚芸術」などについてのゼミに参加し、単位を取得しました。
研究活動の一環として、国立故宮博物院に出入りしました。故宮では図書文献館での資料閲覧や、展示室での作品鑑賞のほか、特別観覧として申請した作品の調査を行いました。さらに、故宮での展示や出版物に用いる中国語文の日本語訳を担当しました。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

26,000 円

生活費:月額

40,000 円

芸術史研究所がある樂學館。国費で文化を学ぶ、気分は遣唐使。
ゼミのプレゼンに向けて、先生との入念なミーティング。
中国語クラスの仲間と。
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

26,000 円

生活費:月額

40,000 円

スペシャルエピソード

感謝してもしきれない、お世話になった・大好きな人

とにかく、周りの人に恵まれた留学でした。
研究所の先生方は渡航前から私を心配してくださり、またゼミでは他の生徒と同じように指導してくださった。言葉がわからない中でゼミに出席することは、私自身だけでなく、受け入れる側にも大きなストレスと負担が伴ったと思います。感謝しきれません。はじめはゼミ室に向かうたび緊張しきりで足取りも重かったのですが、先生方のお心遣いで次第に居心地のよい場所になっていき、帰国前、先生方に別れを告げるときには熱いものがこみ上げました。
そのほか、授業をともにした同學(クラスメイト)や日本からの留学生仲間をはじめ、多くの人が私のことを受け入れてくれました。食事や旅行、野球観戦、ホームパーティなどをともにする仲間にも恵まれました。彼らにも、感謝しきれません。

先生から差し入れのコーヒー。あったかい。
楽天vsラミゴ戦!
台湾って露天風呂あるんだぜ

翻訳者デビュー

故宮博物院は、世界有数の中国美術コレクションを誇っており、台湾を訪れる観光者の多くが訪れる巨大文化施設です。その故宮博物院で2018年12月20日から2019年3月10日まで行われた特別展「亞洲探險記 十七世紀東西交流傳奇(アジア探検記 十七世紀東西交流物語)」において、展示や出版物に用いる中国語文の日本語訳を担当させて頂きました。
自分の文章があれほど多くの人の目に触れる経験はこれまでなく、興奮しました。また、中国語能力の向上を認められ、このような仕事をいただけるようになりつつあることに喜びを感じました。
前後して学術論文の日本語訳なども担当させていただき、語学に向き合う上で大きな励みとなりました。

翻訳を担当した展示室入り口のようす。シックだ。
故宮の展示室にて。このときパーマをかけていた。

日記をつけよう

  • 生活 : 食事

留学先で目にするものや口にするもの、感じた気持ちなどは、すべてが貴重な財産です。今から留学に行くあなたは、かけがえのない若き日の時間と少なくないお金を投じて、こうした財産を買おうとしているのです。しかしあなたは、一年前の今日、何を食べ、何を感じ、何を学んでいたでしょうか。覚えていますか?
日々の経験の中で、瞬間的に心に響いたことは、書き留めずとも蓄積されるのかもしれない。でもそれはほんのひとにぎりで、ほとんどの経験は握った指の隙間からサラサラとこぼれ落ちていきます。意識的に残しておかないと、残りません。
日々の経験を心の動きとともに書き留めておく。今私は、日記を読み返し、留学中の1日1日を鮮明に思い出せます。日記を読めば楽しいし、美味しかったあの店の名前を友達にシェアすることも簡単です。それだけでなく、自分の心理の波長を客観視することで、落ち着きが生まれます。これでずいぶん、自分のメンタルをマネージしてきました。
私自身は留学中に限らず日記をつけていますし、日本での日常も等しく貴重だと思います。ただ留学生活という非日常ではあなたの心は普段と違う動きをするはずですから、日記のつけがいもあるというものでしょう。
留学へ飛び立つみなさん、日記をつけましょう。きっと役に立ちますから。

この一杯の銘柄も、日記を辿れば思い出せます。

これから留学へ行く人へのメッセージ

私は自分の留学が大成功だったと胸を張って言えるし、今後の人生の糧となることを確信しています。でもそれは、留学の目的が明白だったからです。
私は、ただ単に留学すればいいとは思いません。留学はなんとなくで行っても、あまり有意義でない。でも行く必要を少しでも感じたら、飛び込んだほうがいい。今しかできないことですから。