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のっつー

出身・在学高校:
埼玉県立春日部高等学校
出身・在学校:
獨協大学
出身・在学学部学科:
外国語学部ドイツ語学科 現代社会・歴史研究
在籍企業・組織:

留学に関する質問・ご相談はTwitterにてメッセージいただければ、可能な範囲でお答えいたします(返信は遅くなる場合があります)。私がお答えできるものの中で皆さんにも応用可能である項目としては、留学を決意する過程やその中で考えていたこと、計画立案時の判断材料、文章構成、留学をする際に周囲の人を説得する方法などが考えられると思います。学問や社会的な関心の共有は常に大歓迎です。


最終更新日:2019年05月13日 初回執筆日:2019年05月13日

独エネルギー転換から政策立案の手法を学ぶ

留学テーマ・分野:
大学生:交換・認定留学(日本の大学に在籍しながら現地単位取得を伴う留学)
留学先(所属・専攻 / 国 / 都市):
  • ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク(政治学部・エネルギー政策)
  • ドイツ
  • ハイデルベルク
留学期間:
12か月
総費用:
1,600,000円 ・ 奨学金あり
  • トビタテ!留学JAPAN「日本代表/新・日本代表プログラム」 1,850,000円

語学力:

言語 留学前 留学後
ドイツ語および英語 生活に困らない程度の日常会話ができるレベル<Goethe-Zertifikat B2、TOEIC710> 授業や会議の内容が理解でき、必要な発言ができるレベル<DSH-2 (C1レベル)、TOEIC855>

留学内容

日本と似た経済規模や産業構造を抱えながら、再生可能エネルギーの安定的導入を進める「エネルギー転換」の先駆けドイツにおいて、どのような制度設計がなされ、官民が協働しているのか探る、というのが主たる目的であった。
留学に至る前に、ゼミや国内インターンを通して「制度改革には、市民社会の概念、主体的な市民による公共性や規範の形成、調整役としての行政による多機関連携といった部分がどうやら重要らしい」ということは分かっていた。そこで、まずハイデルベルク大学では気候変動政策研究のゼミにて日独政策比較に取り組みつつ、専門講義で公共哲学や市民社会論をイチから学んだ。
実践活動には、国際会議・学会の出席と、地方企業や市民団体の参与観察を盛り込んだ。各主体の取組みや連携、問題意識がどう異なるのか多層的に観察する目的があった。ドイツの枠を超えた超国家的動向に触れるためにスウェーデンとフライブルクでの国際会議に出席し、各国の風力研究者・事業者の話を伺った。長期休暇はハイデルベルクを離れ、ホームステイやインターンに充てた。学園都市のハイデルベルクと工業都市のドルトムント、同国の異なる顔を肌感覚で知ることができたのは貴重だった。ミュンスターでは地元企業で太陽光設置業務を経験し、中華系パネルの勢いに悩んでいること等を知った。国内最大の環境NGOの支局では、地域住民の主体性をいかに汲み取るかを学んだ。

留学の動機

もともと私の所属は外国語学部であり、ドイツ語を専攻し、その過程でドイツ語圏の地域研究を行うことを前提とする環境であった。そのため、研究分野を日独エネルギー政策比較分析としたものの、研究の基礎となるべき政治学・行政学等を専門的に学んだ経験を欠いていた。そこで、せっかく真剣に取り組んできたドイツ語や所属大学の協定枠を活かしたうえで、自身の専門性を高める手段として留学したいと考えるに至った。

成果

まずEUで掲げた強固な脱炭素化方針・規範の下でエネルギー転換が推進されていると感じた。市民は寄付や投資により再エネ設備所有権をもち、共同決定者として意思決定に作用する(例:協同組合・都市公社)。利益構造に身を置き、市民はより主体的に政治・行政と積極的な関係を築くようになる。また、複合的課題に対し、行政は専門家や専門的機関が連携する際の調整役に徹し、高い政策立案・修正力が担保していると感じた。

ついた力

孤独を受け入れ、他者性を敬う力

何事も「議論」の生活であった。議論を好み、意見の相違に心を開き、共に前進していくような体感を学んだ。自分と異なる他者の考え・性質=他者性を理解し、必要な範囲で協働するには、まず自らが孤独を愛し自己を理解し自立する必要がある。自分の感情や思考を豊富な表現で捉えることができて、はじめて他者に共感できる。これは、異なる複数のアイデアを繋ぎ合わせて新たな価値を創出する昨今の時代において大切な営みだろう。

今後の展望

ドイツで知り合った学生達の学問に対する意欲、世間体に囚われぬ主体的な生き方に触発されて、(進路決定を目前に揺らいでいた)研究意欲が高まる結果となった。今の私に必要なのは、私にとって重要な問いには悩み続ける決意だと考え、今後は、今回得られた知見を学問や専門性に繋げる手段として「大学院」を、学術的関心を世に還元する手段として「起業」を念頭に置いて、中長期的に取り組んでいきたいと考えている。

留学スケジュール

2017年
3月~
2018年
3月

ドイツ(ハイデルベルク)

ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク大学の政治学部にて、所属ゼミナールでは日独エネルギー政策比較分析を行った。その他、専門講義では、政治思想史、公共哲学、市民社会論、国際関係論などをイチから学び、政治や行政に関わるような知識を体系的に学ぶ経験をした。
ドイツ語に関しては、出国前にB2(中級者・準上級者)と呼ばれる資格を取得してから留学に臨んだが、当初は上級学年の多い場のディスカッションに入るときや専門性の高い講義を受ける際に大変な苦労を伴った。しかし、最終的にはC1(上級者、DSH合格)と呼ばれる資格を獲得するに至り、留学開始時に比べれば格段に情報処理速度が上がり、上達を確認できた。
また、6月にはスウェーデン・マルメに、11月にはドイツ・フライブルクに赴き、風力関係の国際会議・学会に出席した。

費用詳細

学費:納入総額

35,000 円

住居費:月額

33,000 円

生活費:月額

50,000 円

ハイデルベルクの古城
ハイデルベルクの街を近くの山から眺めた景色
スウェーデンでの国際会議の様子
費用詳細

学費:納入総額

35,000 円

住居費:月額

33,000 円

生活費:月額

50,000 円

2017年
8月~
2017年
9月

ドイツ(ドルトムントおよびミュンスター)

ドルトムント市内のドイツ人家庭にホームステイをしながら、ミュンスターにある地元企業でインターンシップを行った。主に太陽光設備設置に携わり、語彙の難しさから言葉の面でつまづくこともあったが、状況から先回りして判断し、行動に移すことを自ずと実践していくうちに、職場に受け入れてもらえているという自己効力感を得ることができた。日本人としてイベントなどを通して形式的に日本文化をアピールするよりも、現地の人々にとって自分が「日本人そのものの属性を代表している人間」として見られていることを自覚し、常に誠実に振る舞う方が、結果として日本や日本文化に興味を持ってもらえるのだなと感じた。

費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

インターン最終日に作業現場で撮った写真
費用詳細

学費:納入総額

- 円

住居費:月額

- 円

生活費:月額

- 円

スペシャルエピソード

留学中に、自分を勇気づけてくれたモノ・コト

私は、自分の所属(外国語学部・言語系)と取り組んでいる領域(政治学、エネルギー分野・自然科学系の色彩が強め)の齟齬に思い悩んでいた。そして、ドイツ語による情報処理速度が、母語の半分程度に落ちてしまう必然的な非効率性から、あまり新たな知識を獲得できている感覚が得られず、計画そのものの進捗が遅れてしまっていた。結局、計画を変更せざるを得ず、焦燥感や無力感に苛まれて、抑うつ状態にまでなってしまった。しかし、私が沈み切っていたとき、ふと私が憧れて(本音では嫉妬を抱いて)いた留学生の友人が「(私が)ずっとひたむきに頑張っている姿を見ていて、それに負けじと頑張っていたのだ」と打ち明けてくれた。このとき、彼とは本当の学友になれたと感じ、また真摯に誠実に取り組んでいる姿は必ず誰かが見てくれているのだと知った。これがキッカケで私は抑うつ状態を脱することができたのだと思い、彼やその当時に支えてくれた友人・家族に心から感謝している。

孤独な夜に教会の讃美歌に癒されていました…

理想についてはよく考え、結果の善し悪しにこだわらず行動を始め、課題を具体化する。

  • 帰国後の進路 : その他(インターンシップなど)

インターンシップを行いたいと思う場合、どうしても他の現地学生などとの競争になってしまう側面があります。そのため、こちらはまず数当たるしかないということと、反応の善し悪しを先に考えてアクションを起こすか悩む時間があったら、まず1通メールを書き送ってみることをお勧めしたいと思います。ドイツの場合は、日本人以上にPraktikum(プラクティクム=インターンシップ)に積極的な学生が多く、早めに志願して「志願者リスト」に載せてもらう段階があったりします。これに出遅れてしまうのが一番の痛手であるので、兎にも角にも、まず先方に打診してみましょう。先方の反応次第で、ようやく取り組むべき課題が明確になる場合が多いです。

孤独は誰もが抱えるものだと受け入れ、それを他者との共感の糧にする。

  • 周囲の説得 : 恋人・友人

日本で暮らしているうちは基本的に言葉も通じるし、講義、部活動・サークル、アルバイト等で予定を埋めたり友人と過ごすことで孤独を感じないようにする人もいるでしょう。しかしながら、留学においては、日本で器用に振る舞っていた人でも、何かと差し迫った孤独を感じる頻度が増える場合がありました。こうした場合、いっそのこと、孤独に浸ってしまうのも手です。なぜなら、孤独な時間とは、自己完結した時間であり、大切なことを考えるのにうってつけの時間です。また、孤独な感情やそのときに感じたことや思考を様々な言葉で描写してみると、自らの言葉は豊かになり、精神が安定し、他者の感情や思考に輪郭を与え、寄り添うこともできるようになるかもしれません。

留学前にやっておけばよかったこと

当初の所属学部と留学先での専攻が異なっていたため、当該分野の基礎知識を「体系的に」用意できていませんでした。それゆえ、留学中は知識の吸収に手一杯になり、アウトプットに十分なエネルギーを充てることができませんでした。人文・社会科学は、物事を言葉で理解し、言葉で表現するため、このハードルが高くなりがちです。海外大学の公開講義を利用したり、他大学の講義にお邪魔する等、もっと工夫をしておくべきでした。

留学を勧める・勧めない理由

これからの日本はどうなるか分かりませんが、やはり日本では阿吽の呼吸で物事を進めてしまうことがままあり「日本と全く異なった制度のもとで成り立つ社会が存在する」という理解が共有できていない部分があるでしょう。留学を通して、異なる社会の前提・輪郭・着眼点を知れば、日本の現代社会に改善点を見抜き、それを提起する自他の声を受け入れ、前向きに解決の糸口を探る態度が身につくはずです。

これから留学へ行く人へのメッセージ

留学自体をあまり大層なことかのように捉えず、自分のやりたいことにどう繋がってくるのかを日々考えて、国内にいる時点でできることはドンドン実践してください。まず国内でやってこなかったこと、やろうとしなかったことは、留学後にはもっとハードルが上がってしまいます。反対に国内で何かを実践して積み重ねれば、留学というのは至って自然な流れで出てくる選択肢になると思いますよ。