06 実践型留学プログラムのつくりかた

座学だけでなく、海外で実社会に飛び込んで学ぶ留学プログラムが異文化対応力を磨く、と注目されています。
実践型プログラムを運営する5大学へのインタビューをシリーズでお届けします。

FILE.1 共愛学園前橋国際大学
地元企業の海外拠点でのインターンシップや、中学生の海外研修の引率サポートなど、地域(企業や自治体)との連携を通じて、グローカル人材を育成している共愛学園前橋国際大学。グローバル人材育成推進本部事務局・統括代理の堀田誠様(以下、敬称略)に、プログラムの発案から運営のコツや御苦労、成果について、お話いただきました。

堀田誠
広告関連・人材採用関連企業で勤務後、2013年より現職。
現在、グローバル人材育成支援を はじめ、文部科学省より採択されたCOC+事業、大学教育再生加速プログラムの事務業務全般に関わる。

共愛学園前橋国際大学
Q:貴学ではどのような実践型の留学プログラムを運営されていますか?
掘田:本学では「ミッショングローバル研修」と「海外研修サポートインターンシップ」というプログラムが代表的な実践型留学プログラムの事例といえます。
Q:ミッショングローバル研修(以下①)の概要を教えてください。また、プログラムの発案はどのようにされましたか?
掘田:地元企業の英語圏でない海外拠点をベースとして、与えられた課題を日々解決していくPBL型研修です。現地の言語で自己紹介できるようになるといった個人で実施するミッションから始まり、最後には現地で市場調査をして地元企業製品の現地でのプロモーション計画を立案するという課題にチームで取り組みます。
2015年には、サンデンホールディングス(株)のタイ(バンコク)オフィスでの研修を含む16日間のプログラムを実施し、14名が参加しました。
プログラムの発案はGGJ事業構想教員からあり、海外でタフに活躍できる人材育成に取り組む企業の海外研修からヒントを得ました。
Q:海外サポートインターンシップ(以下②)の概要を教えてください。また、プログラムの発案はどのようにされましたか?
掘田:中学生の海外語学研修に同行し、中学校教員の補助、中学生のメンタルサポート等を通して、教員および旅行会社の仕事を体感するインターンシッププログラムです。参加学生は、日本で6日間の事前事後研修(月に2回程度)にも参加し、中学生の英語指導、意識面でのサポートを行います。また、事前研修では学生がサポートするだけでなく、中学生のふるさと学習に一緒に参加することで地域人としてのアイデンティティを深めることもできています。なお、参加学生は研修実施自治体より「特派員」任命を受け、研修終了後に市政広報に報告記事を執筆いたします。
2015年にはアメリカミズーリ州、スプリングフィールドで10日間の研修を行い、3名が参加しました。本学は1学部5コースで構成されており、児童コースに教師志望が多いのですが、毎年3-4名の参加者のうち、1-2名が児童コース所属となっています。
プログラムの発案は、グローバル教育に力を入れている隣市の教育委員会と以前よりカリキュラムパートナー協定を結んでおり、その取り組みの一環として発案されました。
Q:プログラム運営に当たって組まれた予算、人員体制、スケジュールについて詳しく教えてください。
掘田:【①】にかかった予算は現地のロケハン、会議室のリース、現地でのファシリテータ人件費等で参加学生1人当たり10万円程度かかりました。その他、引率教員費、wifiレンタル費用なども必要です。
人員体制としては、プログラム策定は過去に似た企業研修を実施したコーディネータと本学職員(過去に民間でマネジメント経験あり)で骨子を詰め、状況により他の教職員がサポートしました。
スケジュールとしては、企画詳細のツメを9月上旬、学生募集を10月上旬に行い、実際に渡航したのが2月中旬です。
【②】の必要予算は中学生の研修に大学生が入り、サポートするコーディネート費用、地元企業の海外拠点への視察プランを盛り込むことによる現地移動費の増額分等です。それと別に、引率教員費がプラスされます。
人員体制としては、プログラム策定は隣市中学校教員および本学職員(過去に研修先大学へ留学経験あり)で骨子を詰め、状況により他教職員が補助しました。
スケジュールは、企画詳細のツメを3月上旬、学生募集を4月上旬に行い、国内での事前研修開始が5月上旬、渡航は8月という流れです。
Q:運営に当たり困難だったことは何でしたか?そして、どのようにして乗り越えられましたか?
掘田:参加者を集めることに苦戦しました。全ての研修がH25年度からの開講であり、初年度は興味半分もあり一定数の学生は集まったのですが、翌年以降、身につく研修であることが認識はされたものの、中途半端な気持ちで取り組むと負荷が強いということが学生の間に伝わり、応募者を集めるのに苦労しました。
対処として、face to faceのコミュニケーションの重要性に鑑み、グローバルに関連する授業、各ゼミ、個別相談を受けるなどして学生との接点を大幅に拡大しました。これにより、一定数以上の母集団を確保することができました。
Q:定性的、定量的な成果について教えてください。
掘田:【①】について、社会人基礎力12項目の自己評価として、「主体性」「実行力」の項目の伸長が目立ちました。これは自身で考え行動しないと何も進まないという環境の中で研修したためと思われます。
また、学生は地元企業が海外で存在感あることを目の当たりにして、改めて地元、郷土に対する思いが強くなってきたようです。
真剣勝負の研修だけに対象となる学生は少ないですが、この研修参加者は、他の学生と比べ内定取得率が高くなっています。
【②】について、年度でばらついてはいますが、全体に社会人基礎力12項目の自己評価として、「傾聴力」「柔軟性」の項目の伸長が目立ちました。
これは多くの中学生を引率する関係上、調整することを経験する機会が多く、そのため聞くこと、フレキシブルに対応することが必要であったからだと思われます。
①-②に共通して言えることとして、定性的ではありますが、これらの研修に参加した学生の中には研修参加を契機に活動的になった学生も多々見受けられます。例えばある学生は自身で企業を探し海外インターンシップに行き、ある学生は自身で留学先を探しだし1年間の留学を試みたり、ある学生は起業をしたり、等のアクションを起こしています。
Q:今後の展望として、プログラムを継続、発展させていくためにどのような取組をお考えですか?
掘田:これらのプログラムはGGJ事業採択に伴いスタートしたもので、補助金を利用し視察・企画・引率費をねん出していました。もっともこれらのプログラムは本学の特徴を表すものにもなってきており、GGJ事業は本年度で終了しますが、次年度以降も継続の方向で考えています。また、海外研修全般にいえることではありますが、学生の費用負担もありますので、学内独自の奨学金制度を導入することにより、学生が参加しやすい環境を整えていく予定です。
Q:最後に、大学で実践型の留学プログラムの企画運営に携わる(または今後携わるかもしれない)方に、メッセージをお願いします
掘田:これらの特徴的な研修は、どのプログラムも本学が単独で全てを考えて立案したものでなく、関係者との話の中でヒントを得て発展していったものです。例えば教員と関係者との雑談から始まった企画などもあります。つまり、地元企業、旅行会社、留学会社、教育委員会など、日常における外部との接触頻度を高めつつ、信頼関係を築き、近況やアイデアなど気軽に共有できる関係性を保持していくことが重要と思います。