日本商品は海外で売れるのか!?
学生たちが、海外でビジネスプランを提案!
経済学部の大学生が、自ら作ったビジネスプランを携えて、海外の企業にプレゼンテーションをしたり、海外の人たちを対象に市場調査をする。そんな国際交流プログラムが東北大学で実施されています。その名も「経済・経営に特化した課題解決型(PBL型)海外フィールドワーク研修プログラム」。プログラムの概要や実施に至った経緯、学生たちの変化などについて、国際交流プログラムご担当の A Rong Na(アロナ)先生と、参加した大学生にうかがいました。

大学生 :
経済学部 4年生 高橋宗徳さん(NYチームリーダー)
同4年 中尾健太さん(中国チームリーダー)
同4年 市川悠人さん(NYチーム サブリーダー)
同3年 岡沙由理さん(NYチームメンバー)
(以下、敬称略)

渡航前学習のひとつとして、メンター(教授、企業の方等)によるセミナーを3時間×8回行った。
Q:「経済・経営に特化した課題解決型(PBL型)海外フィールドワーク研修プログラム」(以下PBL型プログラム)とはどのようなものですか?
アロナ:東北大学では大学のグローバル化に向けて、大きくは2つの取り組みをしています。一つは留学生の受け入れ態勢の整備、もう一つは、日本から海外へ留学生の派遣です。
留学生の受け入れについては、2008年にグローバル30(文部科学省が平成21年から25年まで行っていた「国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)」)に採択され、英語で学位取得ができるコースの開設や、住宅・就職のサポート等を行っています。
留学生の派遣については、全学共通のプログラムとして、2008年から短期海外研修スタディアブロードプログラム(SAP)を実施してきました。これは、主に1学年、2学年を対象とし、語学研修と異文化体験を目的としたものです。
2014年度に「スーパーグローバル大学等事業 スーパーグローバル大学創成支援(トップ型)」に採択され、PBL型プログラムをスタート。
PBL型プログラムは、主に3年、4年生を対象とし、単に語学や異文化理解を目的とするのではなく、より高い専門性を活かした国際交流プログラムです。工学部、理学部、経済学部、法学部、文学部、教育学部、それぞれの学部が独自のプログラムを実施しています。
「経済・経営に特化した課題解決型(PBL型)海外フィールドワーク研修プログラム」は、今年度からスタートした、経済学部の学生を対象としたプログラムです。
Q:具体的にはどのような活動内容ですか?
アロナ:半年間のプログラムで、異文化理解や英語力だけでなく、課題発見・課題解決力、企画立案力、リーダーシップ、コミュニケーション力など、ビジネスで必要とされるスキルを身につけます。事前学習では、グループごとにテーマを決めて仮説を立て、ビジネスプランを作成します。次のステップでは、夏休みの2週間を利用して海外の提携大学に行き、事前学習で作成したビジネスプランを現地の人にプレゼンテーションしたり、仮説に基づいてリサーチを行います。また、東北大学ならではの試みとして、「東北から世界へ」をテーマに、東北にゆかりのある商品を現地で展示販売するイベントも行いました。帰国後は、学習成果をまとめ、最終プレゼンテーションを行いました。
研修先は、中国(香港、広東)、タイ、米国(NY)の3か国。参加者は45人で内訳は中国14名、タイ16名、NY15名。各国で3つのグループに分かれ、国ごとに1人のリーダーと3人のサブリーダーを選出してグループをまとめました。
渡航前学習のグループワークの様子。4~5人でグループを作り、課題の設定、リサーチ方法などを討論した。
Q:参加者からはどのような感想がありましたか?
高橋:アンケートでは、海外に出たことで、「グローバルな環境で働くということを具体的にイメージできた」「言葉が通じない環境で、限界まで追い詰められたことで強くなった」「行動すればなんとかなるという強さが身についた」「チャレンジすることに壁を感じなくなった」などの声がありました。グループワークによって得たことも多く、「一人ではできないことも、グループでならできるとわかった」「グループで一つのものを作る楽しさと同時に難しさも知った」などの声もありました。ビジネススキルの面では「限られた時間で与えられた課題をクリアするための、タイムマネジメント、優先順位の付け方、先を見越して行動する力などが身についた」という声がありました。
グループリーダーとしてメンバーを見ていて感じたのは、つたない英語でもコミュニケーションしようとする度胸がついた、現地の人に話しかけることに抵抗感がなくなったことが大きい。英語が通じたということが自信になり、もっと勉強しようというモチベーションにもつながっていると思います。帰国してから英語の勉強を真剣にするようになった人もいます。
Q:海外に行って大変だったことは?
アロナ:英語でのコミュニケーションには皆苦労していました。PBL型プログラムは、英語力を問わず参加したいという気持ちがあればだれでも参加できます。ですから海外に行った経験がなく、英語が得意ではない学生も多かったのです。でも、現地に着くと嫌でも英語を話さなければなりません。「東北から世界へ」のイベントでは、集客のためにチラシを配ったり、現地の人に日本の商品を紹介して販売しなければなりませんでした。最初は声を出せなかった学生も、最後は恥ずかしさがなくなって、現地の人たちとコミュニケーションできるようになっていました。また、日本人は引っ込み思案の人が多く本学の学生も例外ではありませんでしたが、どんどんチャレンジするようになるなど、行く前と行った後で、学生たちは皆大きく変わりました。
Q:どのような成果を感じていますか?
渡航中の学習の様子。現地企業の経営者を招き、レクチャーを聞いたりディスカッションをする機会も
アロナ:とても大きな成果を感じています。英語によるコミュニケーション力だけでなく、当初、達成目標として掲げていた、「異文化理解・適応力」「課題 発見・分析・解決力」「企画立案・遂行力」「プレゼンテーション・説明力」「プレゼンテーション・説明力」「コミュニケーション力・伝わる力」、すべてにおいて当初の達成目標をクリアしました。
とくにコミュニケーション力は目に見えて向上したと思います。これまで学年やゼミが違う学生とはコミュニケーションをしなかった学生も、今回の研修でとても親密になり、帰国後もよく集まっています。現地で知り合った学生や、企業の人たちとも、Facebookなどで交流が続いているようです。
現地の企業の方たちにも、学生たちの発想が新鮮だった、今の学生の考え方がわかって刺激を受けたなど、大変喜んでいただきました。
当初は夏だけ実施する予定でしたが、学生たちの希望もあり春にも実施することが決まりました。今回の参加者で「次回はリーダーとして参加したい」という学生も出てきています。
参加者のうち4年生は、既に企業からの内定をもらっていましたが、この経験によって自分の適性を確認したり、キャリアの再確認ができたようです。
3年生はこれから就職活動ですが、PBL型プログラムの経験は強みになるでしょう。逆求人のイベントで、本プログラムの参加者が、企業からの評価で1位、2位をいただいたという報告もあります。
渡航中は、提携大学の授業に参加をしたり、現地の大学生との協働作業や、現地でのインタビュー、企業訪問、フィールドワークや調査を実施した。
Q:実施にあたって苦労されたことは?
アロナ:一つはプログラム作りです。海外の大学との交流を盛り込む上で、日本の大学との文化の違い、カリキュラムの違いなどがネックになりました。
また、学生の負担を軽減するために奨学金を活用しましたが、申請のためには大量の書類を作成しなければなりませんでした。マンパワー的に難しいだけでなく、海外の大学にはなぜこれだけの書類が必要なのか理解されないことも多く、調整に苦労しました。もし本当に日本から海外への留学生を増やしたいなら、奨学金の手続きの簡略化も検討してほしいと思います。
Q:学生の皆さんにもお聞きします。それぞれ、現地で何をされたか、どんなことを得たか教えてください。また、今回の経験は、将来のキャリアの考え方にどのような影響を与えましたか?
帰国後学習。リサーチ結果をまとめて、報告書を作成し、最終報告会で発表。優秀なグループは、表彰される。2014年度の最優秀賞は、NYで日本酒のマーケティングリサーチを行った高橋さんのチーム。
高橋:私はNYチームのリーダーを務めました。グループでは、「NYで日本酒を売るためにはどうすればいいか」をテーマとし、顧客にとってベストな一本を提案する「日本酒のマッチングサービス」のビジネスプランを作りました。現地では、酒店やイ ンポーターにヒアリングをしたり、イベントで一般市民にヒアリングしたりしました。その結果、われわれが考えたビジネスプランがNYで通用するには改善が必要であることがわかりました。日本との商習慣や文化の違いを知ったことはとても勉強になりました。リーダーを経験したことで、自分の適性や得意なこと、欠点にも気づきました。
コンサルティング会社に就職が決まっていますが、今回の活動を通して、自分の選んだ進路に間違いはなかったと思っています。また、海外赴任の代診に対して、いままではアジア・ヨーロッパの経験だけでしたが、アメリカにも迷わず「行きます」と言えると思えます。
岡:NYチームに参加しました。もともとおとなしい性格でしたが、帰国後周りの人に「強くなったね」と言われます。プレゼンをする機会が多かったので知らず知らずのうちに人前で話すことが苦ではなくなりましたし、グループワークをする中で年齢の違う人との接し方を学びました。就職活動は始まったばかりですが、海外で企業の方々と接したり、ビジネスを経験したことが強みになると実感しています。実は、春に実施が決まった研修では、リーダーを志願しました。以前の優柔不断な自分ではありえないことだと思います。
中尾:中国チームのリーダーをしました。私はリーダータイプではありませんでしたが、これから社会に出るならリーダーシップは必要なスキルだと思い、立候補しました。グループのテーマは、「震災以来激減した外国人観光客を増やすにはどうすればいいか」。震災後、香港からの観光客は激減し、2011年の4月は前年同月に比べ約4万800人減。前年比87.6%減となりました(日本政府観光局2011年調べ)。その理由と、日本に来る人は日本に何を求めてくるのかを現地でリサーチしました。事前にインターネットでも調べて行きましたが、現地で調べると、ネットでは見えなかった意見が見えてきました。実際に足を使ってリサーチすることの大切さを知りました。
半年間という長期間のプログラムの中では、みんなのモチベーションが下がることもあり、リーダーとして悩んだこともありました。ただ仲良くするだけでなく、意見がぶつかることを恐れず、言うべきことはしっかり言ったり、時にはかけひきも必要だと学び合ました。
この経験から、自分のアイデアで新しい物を生み出し世界を変えていきたいと思うようになりました。既に内定が決まっていますが、会社の中でもそういう仕事ができればと思っています。調べるとその会社では海外でのMBA研修に参加できる制度があるので、ぜひトライしたいです。
市川:NYチームにサブリーダーとして参加しました。グループのテーマは、「日本で香水の使用率を高めるにはどうすればいいか」。香水の市場が成熟しているNYで、売り方やプロモーションが日本とどう違うのかをリサーチしました。
海外には旅行で少し行ったことがあるだけで、英語も全然話せませんでした。でも、イベントでビラを配ったり、現地でヒアリングをするには英語を使うしかありません。最初は恥ずかしい、嫌だな、と思っていましたが、思い切って声をかけると意外と通じる。やってみればなんとかなるんだと、英語や外国に対するハードルがぐっと低くなりました。
半年の間にはたくさん失敗もしましたが、失敗することによって自分が目指すこととの差が見えてくる。差を縮めようと努力するところに成長があるのだと思います。
海外に行って、自分がどれだけダメかということもわかりましたが、同時に何とかなるという希望も見えた。帰国してからは、英語の勉強を始め、東北大に来ている留学生と積極的に話すようになりました。
これまで海外で働くとは考えたこともありませんでしたが、内定をいただいている会社には海外事業部があるのでチャレンジしても面白いかなと今は思っています。
現地のイベントに参加し、「東北から世界へ」をテーマに、日本から持ち込んだ商品を紹介した。現地の人たちにチラシを配ったり、インタビューをしたりすることで、英語に対する壁がなくなった。
左(写真)は、タイのチュラロンコン大学校内で開催されたFRIDAY MARKET。地域に根差したフリーマーケットで、学生から家族連れまで毎週多くの人が訪れている。
中央(写真)は、香港のISLAND EAST MARKET。推定来場者数500〜1000人。香港人のみならず、さまざまな国籍の方が足を運び、まさにアジアのハブを代名詞するようなマーケット。
右(写真)は、マンハッタンのJAPAN BLOCK FAIR。日本食レストランや日本に関連する物品を行う店舗が出展してのストリートフェア。35000人程度のニューヨーカーの来場を呼び、現地複数メディアに露出。日本文化の発信の場所として、NY市政府にも認定・好評を受けている。

<課題解決型(PBL型)海外フィールドワーク研修プログラムとは>

グローバルリーダーシップ育成を目指し、海外で経済・経営に特化したPBL(Project-Based Learning: 課題解決型学習)を実施し、グローバル社会で活躍するには、英語をはじめとする外国語でコミュニケーションととりながら、多様なバックグランドを持つ人々とともに課題を発見し、考え、解決するという協働作業を行い、多様な価値観、意見の存在を知り、その活動の中で協調性を養い、グローバルリーダーシップを発揮するための基礎力を身につける。本学学部生の海外における行動力、国際教養力、課題解決力、語学・コミュニケーション能力の養成を図るプログラム。
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