誰にでも留学への道は開かれている
「できるかできないか」ではなく「やるかやらないか」
Q:最近の留学事情と東洋大学の取り組みからお伺いしたいと思います。
芦沢:かつて留学は一部のエリートたちのものでしたが、今日では、留学は多様化し大衆化しているといえます。そのため英語力も個々人で様々なので、一人ひとりの学生のニーズに合わせた個別指導をしています。
留学中に英語の勉強をしながら正規の科目も履修できる「ブリッジプログラム(※1)」も一般的に行われています。東洋大学でも、「英語ができないから留学しない」ではなく、だれもが留学ができるスキームづくりをはじめています。
また、全学部の学生を対象に「留学のすすめ」という授業を開講しています。ここでは留学経験者から話を聞いたり、海外の大学関係者に対し「自分が志望する留学」について語る経験をさせたりしています。そこでは、自分自身のポートフォリオを作成することを課題にしています。「留学はしてみたいけど、自分は英語が得意でないから関係がない」という意識から、「英語が得意でない自分も留学できるんだ」「得意でないからこそ留学すべきだ」と気付き、自覚できる授業を行っています。
さらに語学だけでなく、専門分野に関連するプラクティカルなボランティアやフィールドワークをすることにも重きを置いており、特に国際地域学部ではコミュニティ・ディベロプメントに力を入れています。例えばタイのスラムに行きNGOでフィールドワークをしたり、フィリピンで災害支援ボランティアをしたりするなど、学生がやりたいと思うことが実現できるような指導もしています。
最初から自分の限界を決めつけない
自らのマインドセットを変化させるのが留学の価値
Q:留学経験をした学生と留学経験のない学生で違いはありますか?
芦沢:留学中に「自分の変化に自分自身がついていけないくらい変わってきた」と話す学生がいました。また、「日本にいるときの自分は周りから規定されている自分であって、本当の自分ではないことがわかった」という学生もいます。留学先で様々な刺激を受けることで、自分の限界を安易に定めなくなる、自分自身を再発見するなど、留学には大きなインパクトがあります。こうしたマインドセットが変わっていくことも留学の価値だと思います。
フルブライトIEA(The International Education Administrators)を日本に招聘し、国際教育関係者の方々と学生が交流しました。
フルブライトIEAの方に、学生が自分の留学先の志望大学などを直接相談をしています。
Q:留学は語学力よりもマインドセットの部分が大きいということですか。
芦沢:そうですね。例えば留学は就職に不利だと考える学生もいます。もちろん物理的な面で不利な点もあるかもしれませんが、ある一定の時期に日本にいなかったから、というだけで就職ができないということはありません。最近、「留学のすすめ」のゲストとしてお迎えした水松巳奈さんは、留学前に「プチ就活」をしたと語っていました。「プチ就活」とは留学前から就活をスタートさせ、留学中も勉強に支障がでない範囲で就活をすること、ということでした。この話を、留学を準備中の学生に聞かせたところ、「そんな手があったのか!」と驚いていました。工夫さえすれば留学は就職に不利ということはなく、むしろ有利な場面も多いのです。つまり「就職に不利」という概念は、本人があまりチャレンジングなことをしたくない言い訳として独り歩きしている、とさえ思います。
留学の価値を真に理解することが学生本人だけでなく、保護者の方のマインドセットの変化につながると思います。語学のためだけに留学をするわけではありませんからね。
グローバル人材の育成は私たちの使命
成果分析をして次世代につなげる
Q:東洋大学がグローバル化を積極的に進める理由は何でしょう。
芦沢:東洋大学の理念に立ち返ると、創設者である井上円了がこの学校を作ると決めたとき、最初に行ったことは世界中を見てまわることでした。明治の初めに世界一周を2回もする人はなかなかいなかったと思いますが、彼は自分の哲学教育をどう具現化させるかを考えたときに、まずは自ら世界に飛び出したのです。そうした歴史が東洋大学にはあります。125周年を迎えて、あらためて「グローバル人材の育成」を目標に掲げたことは、東洋大学の今後を考えるうえで意義深いことだと感じます。
私たちは留学をさせるだけでなく、「学習成果分析(※2)」の定着もしていきたいと考えています。現在、留学前と後にIntercultural Development Inventory (IDI)という異文化能力テストを実施したり、学生が自分自身で留学を振り返る場として、E-ポートフォリオを使うように指導もしたりしています。E-ポートフォリオを使って学生は自分の学習の記録を振り返ることができます。また、学生がどんな海外体験をしてどんなレポートを書いているかなど、複数の教員が情報を共有できるので、共同でその学生をもっと伸ばす指導ができるようになります。また留学経験者をリソースとすることができるので、次のプログラムを作るなど次の世代への教育にも役立ちます。こうしたことを通じて、私たちはグローバルな人材をこれからも数多く育成したいと思っています。
Q:多くのグローバルな人材が育っていくのが楽しみですね!どうもありがとうございました!
双方向遠隔講義システムを使って、講師が川越キャンパスと朝霞キャンパスで同じ授業を受講している学生に話しかけています。
この「留学のすすめ」では、安河内哲也さん(東進ハイスクール・東進ビジネススクール)や、税所篤快さん(e-Education共同代表)など、ユニークなゲストをお迎えして、留学の意義と社会的価値について講演をしていただいています。
グローバル教育最前線キーワード

※1.ブリッジプログラム
一般に交換留学で選抜され、留学先で正規の授業を履修する学生は、TOEFLやIELTSなどの標準テストで高得点をとり、授業についていける水準の英語力を証明しなければならない。一方、英語力が不足する学生は、「英語が伸びないので留学できない」「留学しないから英語が伸びない」というジレンマに陥るケースも多い。これを解消するため、留学先で英語を学びながら、徐々に正規課程の科目を履修するブリッジプログラムが、多くの大学で留学希望者のために推奨されるようになってきた。

※2.学習成果分析(Learning Outcome Assessment)
留学の成果というものを分析するツールに、アンケート調査など古典的手法に加えて、実際にどのような能力が伸びたかを、ルーブリックや異文化適応テストなど、複数の客観指標を使って分析されるようになった。また、Eポートフォリオを使って長期にわたって学習成果を分析する手法も取り入れらている。東洋大学国際地域学部では学部全体でEポートフォリオを活用した学習成果分析に取り組んでいる。