トップ > 企業の人事に聞く vol10.株式会社三井住友銀行

企業の人事に聞く

企業の人事担当に聞く、
グローバル時代に求められる人材像
株式会社 三井住友銀行
人事部 グローバル人事室長 日隈 洋 様
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今回のインタビュアー
(トビタテ!日本代表生)
慶應義塾大学総合政策学部 前田貴之、早稲田大学国際教養学部 岸谷夏希
ただ海外拠点を持つだけではない、
「真のグローバル化」を目指す

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Q:御社は海外に多くの拠点を持ち、2014年に発表した中期経営計画では経営ビジョンの一つとして「真のグローバル化」を掲げておられます。三井住友銀行のグローバル戦略について教えてください。

日隈:三井住友銀行の中期経営計画では、「アジア・セントリックの実現」、「国内トップの収益基盤の実現」、「真のグローバル化とビジネスモデルの絶えざる進化の実現」という3つのビジョンを掲げています。中でも、アジアの新興国におけるビジネスの強化とグローバル化は大きなテーマです。
当行の海外進出の歴史は100年ほど前に遡ります。現在は約40か国72か所に海外拠点がありますので、既にグローバル化しているとも言えるかもしれません。しかし、その意味あいは近年大きく変わってきています。昔は、早くから海外進出を進めてきた日本の重厚長大産業の大企業が海外における主なお客さまでしたが、今では中小企業も含め、幅広い業種、規模の日本企業が数多く海外に進出しています。また、現在は非日系企業のお客さまとの取引が海外業務の中で非常に大きな割合を占めており、日本の銀行だけでなく、欧米のグローバルバンクや各国の有力地場銀行との競合も激しくなっています。加えて、銀行に求められるサービスも急速に多様化・高度化しています。
こうした流れの中で、「Japanese bank with global network」ではなく「Global bank with Japanese backbone」を目指すこと、これが「真のグローバル化」の意味するところです。

岸谷:具体的にはグローバル化はどこまで進んでいるのですか?

日隈:収益面でみると、2001年時点では僅か4.8%だった海外収益率(海外業務における業務純益のマーケティング部門に占める割合)が、2015年には46%に達しています。人員面でみても、約35,000人の従業員のうち、9,000人弱が海外拠点で働いており、うち約8,000人は現地採用の外国人です。つまり、従業員のおおよそ4人に1人は外国人ということになります。

前田:すごいですね。次に、「アジア・セントリック」についてお聞きしたいのですが、アジア市場の魅力とは何なのでしょうか。

日隈:経済が成熟し、少子高齢化が進む日本に比べて、新興国の経済成長には目を見張るものがあります。足元では少しスローダウンしていますが、まだまだ新興国市場は成長の可能性を秘めています。その中でも、アジアは日本と地理的に近いですし、親日家も多い。このため、アジアで成功モデルを作れなければ他国での成功もないという気概を持って、積極的にアジアでのビジネスを進めているところです。

グローバルと言う前に、よき人材であり、よきリーダーであることが大切

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岸谷:グローバル人材育成の取り組みの中で、「Global Bankers Program」などの研修を実施されているそうですが、それはどのような内容なのですか?

日隈:「Global Bankers Program」は、国内勤務の総合職と、海外現地スタッフが合同で行う合宿形式の研修です。各国から集まったスタッフがチームを組み、当行の経営課題について議論を行い、最終的に経営提言として発表してもらいます。
また、これとは別に、英語がそれほど得意ではない国内勤務の総合職と海外採用の従業員の合同研修も行っています。こちらは、銀行の経営課題を議論するというよりは、異文化交流に主眼を置いたプログラムにしています。

前田:グローバル人材の定義はどのようなものだとお考えですか?特に、学生にはどんな力が求められますか?

日隈:私は、これまでニューヨークとシンガポールに駐在した経験があります。その経験を踏まえた個人的意見ですが、グローバル人材・グローバルリーダーという前に、先ずはよき人材であり、よきリーダーであることが大切だと思っています。いわゆる「優秀な人材」になるためには、様々な専門知識を身に付ける必要がありますし、自ら課題を見つけ解決する力や、論理的思考力、達成志向も必要です。
このような「優秀な人材」が「グローバル人材」となるためには、更に幾つかの条件を満たす必要がありますが、私は、特に「多様性を受け容れる力」が重要だと考えています。具体的には、まず異なる文化や主張を受け入れた上で議論を発展させようとする姿勢が大事です。また、海外では人間関係がフラットで日本ほど長幼の序が重視されない国も多いので、年齢や立場を問わず幅広い意見に耳を傾け、対等な立場で議論する度量も大切だと思います。

岸谷:企業が求める能力として、「コミュニケーション能力」がよく挙げられますが、グローバル人材に必要なコミュニケーション能力とは具体的にどのような力だとお考えでしょうか。

日隈:グローバルに活躍するためには、コミュニケーションの前提となる狭義の語学力はもちろん必要ですが、それだけでは不十分だと思っています。
コミュニケーション能力を受信力と発信力に分けた場合、まず受信力の面で日々実感するのは、「要点抽出力」の大切さです。海外のスタッフと仕事をすると、自分の意見を延々と機関銃のようにまくし立てたり、纏まりがない社内文書を何十ページも書いてきたりすることがよくあります。或る時アメリカ人の同僚に簡潔に書くよう指導したことがあるのですが、「簡潔に書くとUnintelligentに見える」との反応でした。冗長と感じるか否かは文化の違いということなのでしょう。そうであるならば、長い話を辛抱強く聞く傍ら素早く要点をつかむ力を磨いた方がよいというのが私の考えです。
受信力としてもう一つ挙げたいのが「訛の許容力」です。英語には各国独特の訛があり、日本人にはなかなか聞き取りにくい場合もあります。しかし、何度も聞き返すのは相手にとって気分の良いものではありません。私の実感としては、訛った英語を理解する力も含めて英語力ですので、各国の訛の癖を知り、出来る限り早く慣れようとする姿勢が必要だと思います。
一方、発信力としては、「意見を持つこと」、「伝える意思」、「プレゼンテーション能力」が大切です。一般的に、日本人はおとなしく、あまり自己主張しないと言われますが、それでは海外では通用しません。先ずは自分の意見をしっかり持ち、その上で言いたいことがしっかり相手に伝わるまで諦めない姿勢が大事だと思います。英語が上手くないうちは、相手に「何を言っているか分からない」という顔をされることもあると思います。そのような場合も、ひるまず同じことを様々な表現で言い換えて、相手に伝わるまで話し続けることです。
また、職位が上がるにつれて重要になるのがプレゼンテーション能力です。日本人的な感覚からすると「伝え方より内容が大事」と言いたいところですが、海外ではメッセージを効果的に伝えることはその内容と同じくらい重要と考えられています。CEOクラスになると、プレゼンテーションの前に何時間も部屋に籠って練習をすることもあるほどです。

前田:グローバル社会において、日本人はどのように見られているのでしょうか。

日隈:私は、海外に行く前は日本人の色々な欠点が目についていたのですが、実際に海外で生活をしてみると、日本人は総じて世界から高く評価されていると感じました。

岸谷:私も、海外に行って日本のよさがすごくわかりました。各国の留学生たちから、日本人は礼儀正しい、真面目だと言われ、日本人ってこんなにポジティブな印象を持たれているのかと驚きました。これだけ世界から期待されているのだから、日本はまだまだがんばれる、私も何かで日本に貢献したいと帰国してからずっと考えています。

日隈:その気持ちはぜひ忘れずにいてほしいですね。
敢えて一つだけ日本人の残念な点を挙げるとすれば、議論することに慣れていないことでしょうか。反対意見を述べることが相手を全否定することになるという感覚があるのか、遠慮して反対意見を言わなかったり、反対意見を言われて腹を立てたりする傾向があるように思います。また、よく言われることですが、会議の場であまり自分の意見を言わない人が多いです。海外では発言しない人はいないのと同じです。国際会議の場であれば、意見を言えなければ国益が損なわれることにもなりかねませんので、日本人も若いうちから臆せずに議論する力を鍛えるべきだと思います。

留学生の利点は複眼思考力

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岸谷:留学経験をしてきた学生に、どんなことを期待されますか?

日隈:一つの事象を日本と海外両方の視点で見る「複眼思考力」を養うことが、留学の意義の一つだと思います。ずっと日本にいると、日本の視点からしか物事が見えませんが、海外で学ぶことによって違う視点から物事を見ることができるようになると思います。例えば、同じ出来事に関する報道なのに、日本と海外では全く違うことが書かれていたりします。どちらが良い悪いという話ではなく、両方の考え方を理解することによって、より客観的な判断に基づいて自分なりの意見を持つことができます。このように、「複眼思考」に基づいて独自の観点を提供する力は、留学生ならではの大きな付加価値になると思います。
お二人は、留学中に日本ではできないような経験や、考えられない価値観に触れたことはありましたか?

岸谷:私は、アメリカの視点から日本や日本とアジアの関係を見てみたいと思って留学しました。大学の授業では、日本とアジアの関係についてよく議論したのですが、どんなテーマについて考える際にも、アメリカ側には「今の日本があるのはアメリカのおかげだ」という考え方が土台にあり、そうした日米関係を起点にして日本とアジアの国々の関係について議論を深めていくことが多く、日本で国際政治を学んだ時との違いにとても驚きました。

前田:私は大学でバスケットボールのチームに入ったのですが、ある日、練習をしていたら、他のチームの欧米人から「中国人は端のコートで練習をしてくれ」と言われました。日本ではまずない経験にショックを受けましたが、留学のおかげでこういった経験ができた、とポジティブに考えることにしました。

日隈:どちらの体験もとても大事だと思います。海外の上っ面だけを見て「楽しかった」というだけの留学でなく、ほろ苦い経験も含めて日本ではできない経験をして欲しいですね。そして帰国後は、留学で得た「複眼思考」を活かして、「こういう見方もあるのでは?」といった質問を投げかけて議論を膨らませる役回りを務めることで、日本しか知らない人にも良い影響を与えることができるといいのではないでしょうか。 お二人のように、留学で多彩な経験を積んで来られた方々が、今後、日本を力強く引っ張っていってくれることを、大いに期待しています。

インタビュアー紹介(トビタテ!日本代表生)

氏名:前田貴之
大学・学部:慶應義塾大学・総合政策学部
渡航先:アメリカ
留学先:University of Illinois at Urbana-Champaign
留学期間:2015年8月~2016年5月
留学先で学んだテーマ:
アメリカのスポーツマネジメント

取材後記:
海外で積極的に事業展開・拡大を行っており、特に「アジア・セントリック」としてアジアに焦点をおいてビジネスを行っていることを知り、関心を持ったので取材させて頂きました。私はイリノイ大学で交換留学をし、アジア人留学生、アジア系アメリカ人など多くのアジアにルーツを持つ学生、教授と触れ合うことができました。日本と違った文化や価値観を共有できたこの経験は、私にとって非常に大きな経験でありました。今後将来海外での様々なニーズに応えられる人財となり、「価値の創造」を提供出来る人間になりたいと考えています。

氏名:岸谷夏希
大学・学部:早稲田大学・国際教養学部
渡航先:アメリカ
留学先:University of California Berkeley
留学期間:2015年8月~2016年5月
留学先で学んだテーマ:
国際政治、比較政治。主に日本の政治や経済をアメリカの視点から学んだ。

取材後記:
「グローバルな環境で活躍する人は、年齢、立場関係なく、幅広い意見に耳を傾け、誰とでも対等な立場にたって議論する事のできる度量を持つ人」という日隈さんの話はとても印象深く、親近感を感じさせられるものでした。留学先で多くの出会いや経験を通じて、様々な視点から物事を見る経験をしてきた私達は、あらゆる視点から議論を進めていく力を社会で発揮することが求められています。私は今回の取材を通して、どのような議論の場でも客観的に議論が進められる人になるために、日頃からどんな相手でも対等な立場に立って話を聞くことを意識するように努めたいと思います。

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